15 November 2021

草木の聲
玉葱

 染織家志村ふくみさんの芸術精神を継承する染織ブランド「アトリエシムラ」のものづくりを見つめる。
Photo by 田口葉子

植物はその根、幹、葉、皮のすべてを提供し、みずからの精を、色としてこの世におくり出している。

志村ふくみ『語りかける花』(ちくま文庫)

大量に煮出した玉葱の皮
 
「茶」が豊かに糸に染みていく
 
鉄の媒染ではシックな茶が現れた
玉葱の媒染は種類豊か。多彩な茶が現れる
玉葱を主に織られた裂
藍と玉葱の景色

 玉葱はとても身近な食材ですが、実は染料としても素晴らしい植物です。中央アジア原産といわれていて、日本には明治時代になって本格的に導入されました。平安時代の『延喜式』で紹介されているような伝統的な染料ではありませんが、工房で茶系統といえば真っ先に玉葱が挙がるほど重宝しています。

 染めで使用する部分は実ではなく皮です。しっかりとした染めをするには、大量の皮が必要なので、いつも淡路島の玉葱農家さんに分けていただいています。染めの方法は簡単で、パリパリした薄皮を炊き出すとすぐに茶色い染液ができ、そこに白糸を浸していきます。玉葱は茶、黄、金茶、赤茶、焦茶、カーキと媒染によって数限りない色に染められます、これは他の植物ではなかなかできないことです。

 作品制作では藍と玉葱の相性がとてもよく、あたかも海と大地の関係のようです。藍の作品には必ずといっていいほど玉葱の金茶を用います。身近で一番頼りなる染料、それが玉葱です。

アトリエシムラ代表 志村昌司