06 September 2021

草木の聲
蘇芳 vol.2

 染織家志村ふくみさんの芸術精神を継承する染織ブランド「アトリエシムラ」のものづくりを見つめる。
Photo by 田口葉子

白、黒、金銀という極限の色しか赤は受入れようとしなかったが、未熟な私にその力量はなく、私は赤に圧倒され、寝込んでしまった。

志村ふくみ『語りかける花』(ちくま文庫)

 
 
 
機にかかる経糸
 
緯糸は織り手のリズムに委ねられる
 
機の音が工房に響く

 蘇芳(すおう)の色は非常に力強いため、織りのときには、配色にいつも苦労する。淡い色だと蘇芳の力強さに負けてしまうため、黒や金、銀など同じぐらいの強さをもつ色でないと釣り合わない。蘇芳を織り入れるときには、「蘇芳と格闘する」というほどエネルギーが必要で、「寝込む」という表現も大げさではない。

 今回の織りは、経糸(たていと)が蘇芳と黒糸の一本ずつの交互になっていて、踏木を踏むたびに、真紅と黒の画面が交互に入れ替わる。いわば経糸のなかに真紅と黒の二つの世界があり、そこに茜、玉葱、藍などの色糸が緯糸(よこいと)として入って、一つの色面を構成しているのである。織物は非常に複雑である。

 蘇芳は、例えるならば、女性の芯の色であり、純粋性と魔性を併せ持つ色だと祖母がよく言っているが、実際に染めて織る体験をすると、その言葉を実感する。思わず女性の生きざまを託したくなるような、魅惑的で深い精神性をたたえた色、それが蘇芳なのである。

 アトリエシムラ代表 志村昌司