29 November 2021

草木の聲
色無地

 染織家志村ふくみさんの芸術精神を継承する染織ブランド「アトリエシムラ」のものづくりを見つめる。
Photo by 田口葉子

私にとって色は形なのです。

志村ふくみ『一色一生』(求龍堂)

 
陰影に表情が変化する
糸のリズムを感じる
さまざまな色の無地の反物
 

 アトリエシムラでは、藍、茜、緑、紫根、白樫など、さまざまな色無地の紬織の着物を制作していますが、実は色無地はとても難しいのです。縞や絣といった特別な技術を使わないから簡単だということは決してなく、むしろ色そのもの、生地そのものでごまかしがきかないという意味では、色無地ほど難しい織物はありません。祖母が色無地を「はるか彼方の目標です」と言った意味も、実際に制作してみるとよくわかります。

 草木染めによる紬織の色無地は、よくみると実に複雑な表情をしています。例えば、藍無地といっても、1本1本に微妙な濃淡のグラデーションがあり、遠くから見れば無地ですが、近くでみると陰翳を含んだ風合いがあります。柳宗悦によれば「無地」とは文様がないという意味ではなく「無限」ということを意味しますが、まさに色無地は無限の世界の広がりを感じさせます。

 私たちの仕事は植物の「生命」から「色」をいただき、それを織りによって「形」にしていきます。いわば「生命」、「色」、「形」という過程をへて、生命が物質化していくわけですが、色が形となっている色無地は「生命と形のあわい」にある特別な着物といえるのかもしれません。

アトリエシムラ代表 志村昌司