2022年は、寅年。

 千總のコレクションを代表する「虎」と言えば岸竹堂(きしちくどう、1826~97年)筆の〈猛虎図〉(絹本著色、明治23年)です。本作は、明治35(1902)年に京都帝室博物館(現京都国立博物館)で開催された新年陳列「梅花・寅」で展示されたことが、当時の雑誌に記録されています。120年前経った本年に、改めてご紹介したいと思います。

岸竹堂筆〈猛虎図〉(上:左隻、下:右隻、千總蔵)

 日本人が実際の虎を目にするようになったのは、近代以降と言われています。それまでは天と地、雨と風、陰と陽などと、「龍」と対比されるかたちで、自然現象やその力の象徴である神様として「虎」は表現されてきました。また、子を大切に育てる虎の様子から、子孫繁栄などの吉祥寓意的なモチーフとしても考えられています。

霊獣から現実の獣へ

 それがリアリティを持って絵画で描かれたきっかけとなったのが、岸派の祖と言われる岸駒(がんく、1756~1838年)です。岸駒は、虎図制作にあたりその頭蓋骨をもって研究を重ね、他にはない真に迫る虎の表現を獲得したと言われています。以後、岸派は虎図の名手と讃えられてきました。その4代目にあたる岸竹堂は、明治20年頃に実際の虎を見たことにより、虎を神様や霊獣ではなく現実の獣に更に近付けたと言われています。そして、その絵画の1つが本作の〈猛虎図〉です。

左:左隻の虎  右:右隻の咆哮する虎
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