〈紅縮緬地垣と雪持梅に文字模様小袖〉江戸時代中期(18世紀中期-後期)千總蔵

 華やかな紅色の一領。白雪がつもる梅の木が、生地の地色を白く染め残した絞り染めと金糸の刺繡によって、浮かび上がります。
 肩と袖、胸などに散らされた文字は『古今和歌集』巻第6冬歌の一首。

  雪ふれば木ごとに花ぞさきにけるいづれを梅とわきてをらまし  紀友則

 梅に雪がつむ様に、花がどこにあるのかわからないという、なんとも風雅な情景です。小袖全体に散らされた小さな白い玉も、雪の花か、梅の花か、見分けがつかないようです。
 小袖の後裾には、梅見茶屋の垣が取り回され、床几にタバコ盆と湯呑みの表されています。今しがた、二人連れの客が席を立って梅林の方へ去ったのでしょうか。 

 

和歌の情景をまとう

 和歌に表された情景を意匠として身にまとうのは、世界的にも珍しい文化かもしれません。

一般社団法人 千總文化研究所 株式会社千總がもつ有形・無形文化財を核として、「京都」「技術」「美」の3つのテーマを柱に調査研究・教育普及活動を実施。学際的研究を通して、文化と社会のつながりを浮き彫りにし、新たな文化の創造と継承を目指している。

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