陰暦2月は「夾鐘(きょうしょう)」とも呼ばれ、暦の上では春、木の芽や草の芽が息吹き始める月。厳寒の中にも、わずかな春の兆しを見つけたいものです。

 〈紫縮緬地竹林孟宗物語模様小袖〉は、雪がしんしんと降り積もる深い竹林の景色が広がっています。しかしよく見ると、竹の根元にいくつも筍が顔を出しています。そして、その傍らには蓑や笠、鍬が置かれ、この雪の最中に誰かが筍狩りにやってきたことを暗示しています。

〈紫縮緬地雪中竹林孟宗物語模様小袖〉江戸時代後期(19世紀初期)、千總蔵

孟宗の逸話題材に

 時は、中国の三国時代。呉の孟宗という人物が、老いた病母の望みを叶えるため、雪中の竹林に筍を求め分け入ります。季節外れの真冬に筍があるはずもないのですが、その親孝行の思いが天に通じて筍を得ます。食した老母は、病が癒えて長寿を保ったという物語です。


 中国で古来有名な孝子24人を「二十四孝」と呼び、孟宗はその1人です。彼らの逸話を集めた書は日本にも伝わり、浄瑠璃の演目や『御伽草子』に取り入れられ広く親しまれました。

 裾から腰の上まで模様のある本小袖は、身分ある女中の衣装であることを示します。袖が脇に綴じ付けられ、裾ふきの形も変えられずに当時の姿を伝えています。

 

 竹の葉に積もった雪は、糊防染によって生地の白地を染め残して表され、竹の葉は極めて細かな摺疋田(すりひった)と紅色、萌黄色、金糸の刺繡によって繊細に表現されています。筍は、よろけさせた茶色の糸を撚り糸で縁を綴じつけ、とても写実的です。

 もう1領、中国に由来する模様を持つ〈紫紋縮緬地琴棋書画模様小袖〉をご紹介しましょう。

 一般社団法人 千總文化研究所 株式会社千總がもつ有形・無形文化財を核として、「京都」「技術」「美」の3つのテーマを柱に調査研究・教育普及活動を実施。学際的研究を通して、文化と社会のつながりを浮き彫りにし、新たな文化の創造と継承を目指している。

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