〈紅梅のいと紋浮たる葡萄染の御小袿、今様のいとすぐれたる…〉

 『源氏物語』「玉鬘」の帖で、光源氏は美しい姫君たちへそれぞれに想いを込めて晴れ着の衣配りをします。中でも最愛の紫の上に贈ったのは、紅梅の文様が織り込まれた葡萄染、つまり赤紫色の小袿と、今様色と呼ばれた紅色の袿でした。

 赤い薔薇の花言葉は「愛」や「美」などとされ、また2月になるとバレンタインのために赤やピンクのハートマークが街を彩ります。今も昔も洋の東西を問わず、赤は愛する人に贈る色、女性を美しく見せる魅惑的な色と言えるでしょう。

高価な「禁色」 紅花の赤

 化学染料が登場するまでの日本において、赤の色は、顔料では朱・鉛丹、染料では蘇芳・紅花・茜から生み出されました。色彩表現の素材は、土や岩などから採取する顔料と、植物の葉や根から抽出する染料とに大きく別けられます。
 中でも紅花は高価で、紅花から抽出された色は、律令時代には高位の人にしかその着用が許されない禁色でした。エチオピアや中近東が原産とされ、日本に伝わった時期は諸説あるようですが、江戸時代には山形地方は紅花の産地でした。
 花弁の根元のほうは黄色で、先端が赤い紅花は、花だけを夜露がのこる早朝に摘み取り、花弁を乾燥させます。黄色と赤色の色素が含まれいるため、何度も黄の色素を洗い流した後に、灰汁を加えて赤の色素を抽出しなければなりません。濃い紅色に染めるには浸染を繰り返すため多くの紅花が必要であったことから、裕福でなければ染めることができない憧れの色だったのです。


 女性を寿ぐ意匠を持つ、真っ赤な小袖をご紹介しましょう。
 

〈紅綸子地蝶花形梅藤楓模様小袖〉江戸時代後期(19世紀初期)千總蔵

 一般社団法人 千總文化研究所 株式会社千總がもつ有形・無形文化財を核として、「京都」「技術」「美」の3つのテーマを柱に調査研究・教育普及活動を実施。学際的研究を通して、文化と社会のつながりを浮き彫りにし、新たな文化の創造と継承を目指している。

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