伊豆倉人形は、別名「御所人形」とも呼ばれ、京都を代表する人形のひとつです。元来は宮中などで贈答品として用いられていたと言われています。

 雛人形が多く飾られるこの季節に、美術館や博物館でご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。つやりとした白い肌、ふくよかな肢体を持ち、子どものようなかわいらしい姿をしています。

 今回ご紹介するのは、そうした伊豆倉人形の絵画を複数収録した、日本画家の芝千秋(しばせんしゅう、1887~1956年)による手鑑帖〈伊豆倉人形図〉です。

芝千秋筆〈伊豆倉人形図〉のうち、〈還城楽の図〉(昭和24〔1949〕年頃、千總蔵)

 燃えるような赤い装束に身を包んだ、伊豆倉人形。左手は剣印を結び、右手に赤い桴(ばち)を持っているのでしょう。とぐろを巻く金の蛇が眼前に控え、両手を挙げて後方に飛び上がっています。顔をよく見ると唇の間から小さな歯が覗き、口角が少し上がっているように見えます。喜んでいるのでしょうか。

荘厳な雅楽との「ギャップ」

 本作は、雅楽「還城楽(げんじょうらく)」の有名な一場面を表したものです。還城楽とは、蛇を相手に足を踏み鳴らして勇壮な舞を披露する曲で、一説によると好物の蛇を見つけた胡国の人が喜ぶ様子を舞にした、おめでたいものと言われています。本作は、思いがけず蛇に出会い歓喜する姿を、伊豆倉人形が模しているのでしょう。荘厳な雅楽と、愛くるしい仕草の伊豆倉人形との「ギャップ」に、見ている私たちにも笑みがこぼれます。

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