ICA京都がなぜいま必要か
 

 「文化が全く批判を超絶したもので、それぞれを大事にするだけで果たしていいのか」。京都芸術大学の浅田彰教授は熱を込めて問題提起した。同大学の大学院芸術研究科に属する現代アートの研究機関として2020年に設立された「ICA京都」のトークセッションが2022年3月4日、京都市内で行われた。その所長を務める浅田教授は、京都と世界をつなぐプラットフォームとしてICA京都が今、なぜ必要なのかについて、その前提となる現代の時代認識から語り始めた。

あさだ・あきら 1957年生まれ。京都大学経済学部卒。同大学院修士課程修了。1983年、京都大学人文科学研究所助手時代に『構造と力』(勁草書房)を発表し、ベストセラーに。宗教史学者の中沢新一らとともに「ニュー・アカデミズム」の旗手と称された。京大経済研究所准教授を経て2008年から京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)教授。著書に『逃走論』(ちくま文庫)『ヘルメスの音楽』(筑摩書房)など

 「一つの正解として多文化主義、いわゆるマルチカルチュラリズムがある。他方で、グローバルIT資本主義の時代でもある。この二重構造を見た上で何が欠けているのか考えたい」 

 多文化主義は、それまでの普遍化を目指す大きな時代の流れに対抗して、女性や性的マイノリティー、障害者、沖縄、アイヌといった「無数の小さな文化の集まり」を尊重する。

 この潮流を浅田教授は、フランスの哲学者リオタールが指摘した「大きな物語」から「小さな物語」へという流れに触れ、「それぞれのマイノリティーの小さな物語たちが並列的になってきたポストモダン」と解説した。

「切って捨てるのではなく」
 

 それまで不当に覆い隠されていた声が上げられる。切実な問題が固有の言葉で語られる。もちろんそれは「非常に良いこと」ではある。浅田教授はあくまでこれを肯定した上で、現状の問題点を挙げた。

THE KYOTOへの会員登録・ログイン
続きを読むには京都新聞IDへの登録が必要です。
京都新聞IDのご案内はこちら