11 April 2022

草木の聲
冬青 vol.1

 染織家志村ふくみさんの芸術精神を継承する染織ブランド「アトリエシムラ」のものづくりを見つめる。
Photo by 田口葉子

姿美しく、愛くるしい冬青の、寒風の中に凜としてそよぐさまが好きである。

志村ふくみ『語りかける花』(ちくま文庫)

冬山に青々と育つ冬青
 
どのような色に染まるのか話は尽きない
 
煮出した枝から黄色がのぞく
染液
 

山間のまち、京都市右京区京北町。シムラの染料は多くの方に支えられている

 先日、冬青(そよご)を採りに、京都市の北部、右京区京北まで伺った。山の斜面に青々とした一面の冬青の木。京都でこれほど冬青の木がまとまって見られるのは珍しい。私たちはうれしさのあまり歓声をあげた。

 冬青はモチノキ科の常緑樹で、初夏に白い花を咲かせる。とりわけ冬青の蜂蜜は美味である。「そよご」という名前の由来は葉が風によそいで音を立てることによるが、「冬青」という漢字は当て字であろう。冬でも青々した葉をみて、昔の人は「冬青」と名付けたに違いない。

 冬青を染めるには、まず枝や葉を一日か二日、水につけておき、それから炊き出す。葉は真っ赤になり、染液もとろみのあるしっかりした煉瓦色になっている。だんだんと染め場は蜂蜜のような甘い芳香が満ちてくる。十分炊き出した染液にそっと糸をつけると、すーっとやさしい、穏やかなピンクの色が糸にしみこんでいく。

 干された冬青に染まった糸をみて、これを生かすような着物のデザインを想像するのもとても楽しいひとときである。

アトリエシムラ代表 志村昌司

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