09 May 2022

草木の聲
高野槙 vol.1

 染織家志村ふくみさんの芸術精神を継承する染織ブランド「アトリエシムラ」のものづくりを見つめる。
Photo by 田口葉子

驚いたのは高野槙だった。華やかな薔薇色。およそ高野山には似つかわしくないほど可憐な少女のような色だ。

志村ふくみ『たまゆらの道』(世界文化社)

高野槙
焚き出した高野槙
凛としたグレーが現れる
経糸と緯糸によって色調が変化する
丹念に織り上げられた仕覆用の裂

 高野山別格本山である南院とは昔からのご縁があり、高野山に詣でるときはいつも宿坊に泊まらせていただきます。早朝の勤行で御本尊の浪切不動明王に向かって祈りをささげ、一日が始まります。浪切不動明王の尊称は、空海が唐から日本へ帰る際、嵐に遭われ海上荒れ狂う最中この不動明王に祈願したところ、全身から光を放って荒波を切り鎮めたという伝承に由来するそうです。

 今年、南院住職の内海大僧正が第523世法印に昇進されました。「法印」とは弘法大師空海に代わって重要な法会や儀式の導師を務める役職で、高野山の僧侶の最高位になります。3月に新法印のお披露目の式である「法印転衣式(てんねしき)」が開催され、私も参加させていただきました。転衣とは、まさに衣が転ずるという意味で、黒色の法衣から法印の象徴である緋衣へ着替える儀式です。緋色は天上の色だと常々感じていますが、緋衣は弘法大師の名代にふさわしい、神聖な衣でした。

 昇進記念の品として、金剛峯寺大伽藍中門再建に使用された高野六木で染めた、香盒入れの仕覆をアトリエシムラで制作させていただきました。高野山の霊木の生命の色で制作した仕覆は信仰と美の融合した織物のようで、私たちもとても幸せな気持ちになりました。

アトリエシムラ代表 志村昌司

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