06 June 2022

草木の聲
枇杷 vol.1

 染織家志村ふくみさんの芸術精神を継承する染織ブランド「アトリエシムラ」のものづくりを見つめる。
Photo by 田口葉子

やわらかいうす紅色なのだが決して単一な色ではない。そこに何ともいえぬ艶な渋みがあるのだろう。

志村ふくみ『ちよう、はたり』(ちくま文庫)

畑には数々の草木が育つ
 
澄んだ色の染液
お染め前の緯糸(よこいと)
初夏の光の中、お染めが始まった

 京都・嵯峨野にある工房から少し歩いていくと、アトリエシムラの畑があります。藍や紅花、臭木など、普段よく使う植物を栽培していますが、大きな枇杷の木も何本か植わっています。枇杷は秋から冬にかけて白い花が咲き、初夏にはオレンジ色の実をつけます。取れたての枇杷の実は工房の食卓に彩りを添えてくれます。

 枇杷はバラ科の植物で、中国を原産地としています。日本でも、平安時代にはすでに栽培されていたようで、『本草和名(ほんぞうわみょう)』(918年頃)に「比波(ひわ)」として記載されています。ただ当時の枇杷の実はとても小さく、食用にはあまり適していませんでした。むしろ、葉を乾燥させた「枇杷葉(びわよう)」が生薬として用いられていました。現在のような大きな実の枇杷は、江戸時代後期から明治時代にかけて中国から持ち込まれた種子から育成されたもので、「茂木」と「田中」が代表的な品種です。

 枇杷染めは、枇杷の葉と枝を用います。枇杷の葉はちょっと変わっていて、表面はつやがありますが、裏面は灰褐色の毛が密生しています。今回は少しゴワゴワした古い葉で炊き出しをしましたが、染液は橙色で、とても澄んでいました。染め場全体に、枇杷茶のような香りが広がり、とても気持ちのいい染めになりました。

アトリエシムラ代表 志村昌司

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