20 June 2022

草木の聲
枇杷 vol.2

 染織家志村ふくみさんの芸術精神を継承する染織ブランド「アトリエシムラ」のものづくりを見つめる。
Photo by 田口葉子

植物の樹液から染まるもも色、これは母なる色以前の聖なる色である。

志村ふくみ『母なる色』(求龍堂)

澄んだ染液に染まっていく緯糸(よこいと)
時間差で糸を染めていく
枇杷色のグラデーション
糸巻きの音が工房に響く
手作業で小管に巻かれる
小管に巻かれたさまざまな枇杷の緯糸

 枇杷で染めた糸を灰汁(あく)で媒染すると、とてもやわらかいうす紅色になります。梅や桜からもうす紅色が染まりますが、初夏の枇杷の色はまた違います。夏の太陽の光を浴びた明るさが色の中に宿っているようで、枇杷の実を連想させます。

 うす紅色、祖母のいうところの『もも色』は、枇杷以外にもさまざまな植物から染まります。なぜうす紅色の植物が多いのでしょうか。もしかすると、うす紅色が植物の体内にある樹液の色だからかもしれません。植物は外から見れば緑色ですが、内部には清らかな、うす紅色の樹液が流れています。思想家のルドルフ・シュタイナーによれば、うす紅色は人間の肌の色を象徴していますが、樹液と人間の肌が共通の色を持っているということは、両者の根源にある生命のつながりを示すのではないかと感じます。

 植物の聖なる色であるうす紅色は本来決して空気に触れることのない、隠された色です。その美しさを私たちは染めの現場でどのように引き出すのか、難しい挑戦ですが、これが芸術的な作品へつながっていくのだと思います。

アトリエシムラ代表 志村昌司

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