01 August 2022

草木の聲
夜叉五倍子 vol.1

 染織家志村ふくみさんの芸術精神を継承する染織ブランド「アトリエシムラ」のものづくりを見つめる。
Photo by 田口葉子

すべての植物のそのままの色は淡茶である。

志村ふくみ『伝書』(求龍堂)

 
 
鉄媒染
媒染でしっかりとした茶が現れる

 とてもかわいらしくて、私たちの中でも人気のあるヤシャブシ。カバノキ科の落葉小高木で、本州、四国、九州に分布し、やせ地でもよく生育します。ヤシャブシは漢字で「夜叉五倍子」と書きますが、これは実の表面が粗い松かさ状なので「夜叉(やしゃ)」、さらにウルシ科のヌルデの虫こぶである「五倍子(ふし)」のようにタンニンを多く含むことから、「夜叉五倍子(やしゃぶし)」となったそうです。

 茶色は植物の樹皮や実に含まれているタンニンで染まります。タンニンは植物界に広く分布しているのですが、それは抗菌作用があり、植物を守る役割を果たしているからです。そのため、多くの植物はそのまま染めると茶色になります。中でも、ヤシャブシの実はタンニンが多く含まれているので、昔から茶色の染料として重宝されてきました。

 ヤシャブシの実は炊き出すと淡茶からだんだん濃茶の染液になっていきます。一晩寝かして染めると濁りのない澄んだ茶色になり、最後に鉄媒染するとさっと変化して見事な焦茶色になりました。

 植物を守ってくれていたタンニンが、今度は色となって私たちを守ってくれるのかもしれません。

アトリエシムラ代表 志村昌司

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