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巨大メーカー、京都でなぜ育つ 背景と共通項探る

京都の「1兆円企業」4社の売上高推移
京都の「1兆円企業」4社の売上高推移

 売上高1兆円を超える大手上場メーカーが今春、京都に4社誕生した。任天堂の2018年3月期連結売上高が1兆556億円となり、7年ぶりに大台を回復。すでに「1兆円企業」だった京セラ、日本電産、村田製作所は、売上高2兆円を射程に捉える。東京や大阪、名古屋ほどの大都市ではない京都で、なぜこれほどの巨大メーカーが次々に育つのか。背景と共通項を探った。

■スイッチでV字回復

 「V字回復」。任天堂が4月に18年3月期決算を発表した直後、ウェブニュースを含む各メディアは、前期の2倍以上に急伸した売上高を速報した。

 同社は、据え置き型ゲーム機「Wii(ウィー)」や携帯型の「DS」が世界中で売れた08年3月期から4年連続で売上高が1兆円を超えた。リーマン・ショックが直撃したさなかの09年3月期に記録した売上高1兆8386億円は、今なお他の京都企業に破られていない。だが、その後はヒット商品に恵まれず、業績は低迷。17年3月期は売上高が5千億円を切った。

 1兆円への復活をけん引したのは、昨年3月発売の新型家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ」だ。据え置き型と携帯型の二つの特性が受け、世界的な大ヒットとなった。

 任天堂が達成した売上高の最高記録更新は、そう遠くないかもしれない。01年3月期に京都初の1兆円台を達成した京セラは、大台を18年間維持し、3年後の21年3月期に2兆円に伸ばす計画だ。15年3月期にそろって1兆円を突破した日本電産と村田製作所も、業績が急拡大している。

■部品需要の拡大続く

 3社は、スマートフォンや家電、自動車に使われる電子部品を主力としている点で共通する。コンデンサーの小型化やモーターの省エネ化など大規模な研究開発投資を続け、高い市場シェアと価格競争力を築いた。高収益であるのも特徴だ。

 「売上高2兆円はさほど難しくない。むしろ焦点は営業利益3千億円だ」。日本電産の永守重信会長兼社長はこう述べ、次の大台到達目標とする21年3月期のさらにその先にまで視線を向ける。幅広い機器のインターネット化(IoT)や電気自動車、ロボットの普及でさらに部品需要は高まるとみられ、京セラの谷本秀夫社長も「2兆円は順調な手応えだ」と自信を示す。

 電子部品3社の成長は、積極的なM&A(企業の合併・買収)と設備投資も原動力だ。日本電産は昨年2月、米企業から産業用モーターなどの事業を13億ドル(約1400億円)で買収。今春には10億8千万ドル(約1200億円)を投じ、南米のコンプレッサー(圧縮機)メーカーを買収する計画を発表した。村田製は昨夏、ソニーの電池事業を取得。生産体制も強化し、2年連続で3千億円超の設備投資を計画する。

■社員を束ねる求心力

 4社の機敏な投資判断や変化への対応力は、カリスマ経営者の存在と独自の企業哲学に負うところも大きい。

 京セラは、創業者の稲盛和夫名誉会長が経営の一線から退いているが、今なおグループ全体の精神的支柱だ。日本電産は、永守氏の強烈なリーダーシップと個性が社内外の人材を引きつける。村田製も、創業家トップの村田恒夫社長が拡大する拠点や社員を束ねる求心力の役割を果たす。

 任天堂も、花札・トランプ製造の家業を継ぎ、世界的なゲーム機メーカーに育てた故山内溥元社長の「人と違うことをやれ」という教えが社内に息づき、独創的な「遊び」を提案し続けている。

 先を見通し、決断力に秀でた創業家トップの存在も、京都から1兆円企業が育った要因の一つといえそうだ。

【 2018年06月17日 11時50分 】

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