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社説:事業承継 京滋の中小企業を守れ

 経営者の高齢化や後継者難により、廃業に追い込まれる中小・零細企業が増えている。

 国の集計(2015年度)によると、廃業率で滋賀県が全国ワースト1位(4・9%)、京都府が同2位(4・6%)と連なって全国平均(3・8%)を上回り、特に深刻だ。廃業で優良な技術や雇用が失われると、京滋の経済基盤を弱めてしまう。円滑な事業承継は喫緊の課題といえる。

 政府は本年度の税制改正で経営権譲渡や株式移転を後押しする仕組みを導入した。この機を捉え、京滋の行政や経済団体、地域金融機関は連携を強め、承継先の仲介や後継者育成、経営相談などに一層注力してもらいたい。

 国の試算では、70歳以上の中小企業経営者は全国約245万人で、半数は後継者が未定だ。放置すると、廃業の急増で約650万人の雇用と22兆円のGDP(国内総生産)が失われる恐れがある。

 京都府内でも昨年度の休廃業企業は447件(民間調べ)。業種では建設、サービス、小売、製造などが多く、倒産件数(269件)を大きく上回った。

 国の全国調査で休廃業企業の5割近くは経常黒字といい、後継者さえ見つかれば企業を存続できた可能性は高い。そこで国は税制改正により、事業承継に伴う相続税や贈与税の負担を軽くし、株式売却の時点で株価を評価し、税を減免する制度なども設けた。

 連動して京滋の経済団体や行政も動く。滋賀では6月、県や経済団体、公認会計士など44団体が「事業承継ネットワーク」を立ち上げた。廃業率ワースト1の返上へ、経営者への聞き取りや承継計画作りの支援を進める。

 京都商工会議所が2年前に開設した府事業引継ぎ支援センターでは、昨年度の相談件数が初年度と比べて倍増した。本年度はM&A(企業の合併・買収)を手掛ける民間機関と連携を強めるという。

 後継者が親族や社内にいない場合、M&Aは承継の有効な手段だが、相手先企業がすぐに見つかるとは限らない。経営者は将来を見越し、早めに決断、行動することが欠かせない。そうした意識を高める経営者への啓発も重要になる。

 経験やスキルの豊富な大手企業出身者をトップに迎え、世代交代に成功した企業もある。企業同士の仲介だけでなく、経営者の人材登録のような仕組みも有効だろう。京滋などで府県を超えた情報の共有も考えられないか。慣例にとらわれず、手を尽くしたい。

[京都新聞 2018年07月23日掲載]

【 2018年07月23日 11時20分 】

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