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京都で伸び悩む「正規」民泊 独自の駆け付け要件厳しく

民泊に米国人4人組を迎え、部屋の使い方を説明する大藪さん(左端)=京都市北区
民泊に米国人4人組を迎え、部屋の使い方を説明する大藪さん(左端)=京都市北区

 今月初め、京都市北区紫竹の民泊「Cozy House」に到着した米国人4人が笑顔を見せた。「部屋がきれいで、洗濯機や電子レンジなど設備もたくさんあっていいね」

 6月15日に施行された住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づき、大藪達也さん(56)が市に営業を届け出て8月下旬に受理された。父(89)が所有する学生・単身者向けの賃貸マンションを活用した。老朽化もあって家賃が下がり気味だったため、計600万円をかけて全33室のうち8室を民泊に改装した。

 9月に民泊仲介大手の米エアビーアンドビーが運営するサイトに掲載すると、すぐに反応があった。10~11月はほぼ満室で、来秋の予約も入っている。1泊3500円で、追加料金は一人当たり1700円。市中心部からはやや離れているが、「新法施行前に違法民泊を利用していた客を取り込めば、賃貸の3倍の収入が見込める」と大藪さん。管理者としてマンション1階で暮らし、利用者にきめ細かく応じる。

 2020年東京オリンピック・パラリンピックをにらみ、政府が観光分野の規制緩和として鳴り物入りで解禁した民泊。ところが新法施行から4カ月余りたっても、京都市が受理した件数は157件にとどまる。全国8759件のうちの1・8%にすぎない。

 新法前に違法なヤミ民泊がはびこっていた京都市で正規の民泊が増えない要因は、市が新法に上乗せして条例で定めた規制にある。中でも家主不在型の施設を対象とした「駆け付け要件」が大きい。緊急時や周辺住民の苦情に常に対応できるよう、民泊から徒歩10分以内の半径800メートルに管理者の駐在を義務付けた。新法施行前、違法民泊などで夜中の騒音やごみのポイ捨てが社会問題化したため、市が独自に考案した。

 大藪さんのように、同じ施設や周辺に自宅がなければ、別に管理者を雇い、近くに待機させる必要が生じる。個人事業主が規制に対応するのは容易ではない。

 民泊ビジネスにより、空き家解消を狙っていた不動産業界も苦慮している。市内の不動産会社は、届け出を予定していた民泊物件と管理者の駐在場所の距離が800メートルを少し超えていたため受理されなかったといい、「市の姿勢は厳格過ぎる」とこぼす。

 別の不動産会社は、自社の店舗に管理者を置いて駆け付け要件に対応する民泊支援のビジネスに乗り出そうとしている。民泊経営に意欲を見せるマンションオーナーから10件の相談があったが、「物件から800メートルの範囲内に店舗がなかったり、費用対効果が見込めなかったりして断らざるを得なかった」という。

 民泊が広がっていないのは、京都市以外の府内市町村も同様で、9月末までの届け出受理件数はわずか21件となっている。

 長岡京市は京都市だけでなく大阪にも近い好立地だが、受理はまだゼロ件。京都市のような厳しい規制は設けていないが、積極的に受け入れることもしていない。市は将来的な定住につながる観光客を増やす方針のため、担当者は「誘致したいのは旅館業法に基づく安心で上質な宿。民泊は住民が不安になる面もあり、市のまちづくりの方向性とは異なる」と話す。

 厳しい規制や地域への悪影響を巡る懸念が残る中、業者や自治体は民泊との距離を測りかねている。

     ◇

 <連載 まち異変 お宿バブルその3>外国人観光客が急増する京都の宿泊業界で異変が起きている。まちにホテルやゲストハウスがひしめき合い、すでに「バブル状態」との指摘が強まっている。一方で、ヤミ民泊や交通渋滞などによる「観光公害」も深刻化している。国際観光都市の今を見つめ、課題を追う。

【 2018年10月24日 15時30分 】

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