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「観光公害」市民と摩擦 京都・やむを得ず外国人制限の店も

混雑する京の繁華街。市民や外国人観光客らが行き交う(京都市下京区・四条通河原町西入ル)
混雑する京の繁華街。市民や外国人観光客らが行き交う(京都市下京区・四条通河原町西入ル)

 それは、悪夢のような光景だった。

 丹精込めて作った料理が散らかり、高級な箸が床に転がる。たばこの吸い殻を大きな足が踏みつける。

 清水寺に近い京都市東山区の居酒屋「森ん家ょ」。外国人観光客の目に余る行為は数年前から繰り返された。食器や灰皿を持ち帰ったり、ほとんど注文せずに長時間居座ったりするケースも目立つ。

 「腹が立つ。なじみの客を大切にしたいのに」。店主の森田秀樹さん(44)は悩み、1年前から外国人の入店を制限している。やむを得ず「予約でいっぱい」と言って入店を断ることもある。

 市内の年間観光消費額は1兆円を超え、京都の消費をけん引しているが、森田さんには全く実感がない。むしろ、外国人が増えすぎて日本人が遠ざかるようになり、売り上げが落ちた。

 生まれ育った東山区の街並みもすっかり変わった。店の窓から見える歩行者は大半が外国人。一方で地域の少子高齢化は加速する。森田さんは「市はこれ以上ホテルや簡易宿所を作る許可を出さないでほしい」と思うようになった。

 観光客の急増に市民も悲鳴を上げる。ホテルや簡易宿所などの宿泊施設が乱立する「お宿バブル」が地価高騰を招き、不動産業者による「地上げ」も発生している。宿泊施設に転用された長屋は経営者が分からず、キャリーバッグを抱えた外国人が早朝、深夜も出入りする。多くの市民が「ここは本当に私たちのまちなのか」と自問自答する。

 古都を襲う「観光公害」は、日本の文化やマナーに対する外国人観光客の無理解や誤解にも起因し、市民との摩擦を生んでいる。

 観光客が増えすぎ、安全のため2年連続で中止された東山区祇園での「祇園白川さくらライトアップ」。世話人の秋山敏郎さん(71)は「行政や旅行会社が事前に文化やマナーをしっかりと教えるべきだ」と訴える。

 市はごみのポイ捨てや飲食店への持ち込みといったマナー違反の事例をまとめたリーフレットを配っているが、外国人観光客に浸透しているとは言いにくい。京都外国語大が外国人観光客を対象に実施したアンケート調査の結果でも、マナーが知られていないことが判明した。オーストラリアの男性(24)は「日本のマナーを知らず、ごみのポイ捨てなどで迷惑を掛けるケースもあると思うので、マナーを学べる機会を作ってほしい」と要望する。

 市は今月1日に導入した宿泊税の本年度税収を19億円と見込み、観光客分散化や市バス混雑対策、違法民泊対策などに充てる。それでも観光公害解消は遠く、市幹部は「来年度はもっと予算をかけないといけない」と危機感を募らせる。

 観光公害は「オーバーツーリズム」とも呼ばれ、世界共通の課題だ。スペイン・バルセロナ市では2015年、市長選でホテル建設凍結を訴えた市長が当選した。昨年には、観光客が集中する地域で宿泊施設の新規立地を認めない制度も導入した。現地で都市計画を研究する龍谷大の阿部大輔教授は「京都市も都市政策と統合した新たな観光戦略が必要。学区単位での宿泊施設のベッド数の総量規制も検討すべきだ」と提起する。

 観光公害を減らし、持続可能な観光に導くため、政策の総動員が求められている。

 <連載 まち異変 お宿バブルその6(完)>外国人観光客が急増する京都の宿泊業界で異変が起きている。まちにホテルやゲストハウスがひしめき合い、すでに「バブル状態」との指摘が強まっている。一方で、ヤミ民泊や交通渋滞などによる「観光公害」も深刻化している。国際観光都市の今を見つめ、課題を追う。

【 2018年10月28日 15時00分 】

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