出版案内
福祉事業団
京都新聞AR

農業もシェアリングの時代に ITで作業分担、重労働の概念覆す

ルッコラなどを収穫する利用者ら。楽な姿勢で収穫でき、野菜に触れて癒やしも感じるという(京都府精華町光台・ATR)
ルッコラなどを収穫する利用者ら。楽な姿勢で収穫でき、野菜に触れて癒やしも感じるという(京都府精華町光台・ATR)

  関西文化学術研究都市の研究機関や大学、企業が、最先端の技術を駆使しながら、次世代の農業を研究している。その一つが、住民が好きな時間に作業を分担して野菜などを育てる「シェアリング農業」。農業は重労働という概念を覆し、雇用や生きがいづくりにもつながると期待されている。農業の新たな形を探る取り組みを追った。

■報酬は取れたての野菜

 シェアリング農業は、国際電気通信基礎技術研究所(ATR、京都府精華町光台)の敷地内にあるビニールハウスで行われている。この日は、障害者就労支援事業所「ここらく」(同町祝園西)の利用者が水菜や小松菜、ルッコラを収穫していた。

 ハウス内にあるのは、高さ1メートル弱の台に砂を敷き詰めた「高床式砂栽培農業施設」。害虫被害を早く見つけることができ、腰をかがめずに作業できるので、車いすの人も作業ができる。

 1年ほど通う男性利用者(39)は小鎌を手に、「いろんな植物に触れて楽しい。人と接することにも慣れてきた」と笑顔だ。作業の「報酬」は、取れたてのみずみずしい野菜。事業所が運営するカフェの料理に使うという。松延美恵所長(41)は「畑をするには体力が必要で、利用者には難しい。頑張るきっかけにもなる」と喜ぶ。

 シェアリング農業は、ATRと東レ建設(大阪市北区)などが総務省の委託を受けて2017年9月から半年間の実証事業を行い、現在も研究が続けられている。

■農業と脳のかかわりも研究

 さまざまな機器をインターネットにつなげる「IoT」を活用する。精華町を中心に、農業初心者や高齢者、主婦、障害者ら140人以上が参加登録しており、個々の体力や空き時間に合わせてスマートフォンなどで時間を選び、種まきや定植、収穫、根処理の作業をする。

 水やりや液体肥料やりは自動制御で行われ、植物や砂質によって時間や量を調節する。ハウス内に温湿度計や照度計、ライブカメラを設置し、利用者が生育状況の確認もできる。葉物野菜だけでなく、にんじんやトマトなど栽培する種類を増やしており、おいしさも追求する。

 実証事業で、のべ455人が作業し、うち8割が「今後も参加希望」と回答した。心拍数などのデータも集め、軽作業であることを確認した。

 東レ建設の北川康孝トレファーム事業推進室長(58)は「農業の自動化や大規模化ではなく、農業を身近な存在にし、あらゆる人が楽しんでプロ顔負けの野菜を作れるシステムを作りたい」と意気込みを見せる。

 農業と脳についての研究も行われている。高床式砂栽培農業施設で作業した高齢者を調べたところ、農作業がストレス軽減に効果がある可能性を見出した。ATRが提携したイスラエルのベンチャー企業と、より詳細なストレス計測を行う予定で、農業の魅力を多角的に検証する。

【 2019年04月11日 18時19分 】

ニュース写真

  • ルッコラなどを収穫する利用者ら。楽な姿勢で収穫でき、野菜に触れて癒やしも感じるという(京都府精華町光台・ATR)
  • ATR施設内から、IoTを駆使して水やりや施肥を自動でコントロールしている
京都新聞デジタル版のご案内

    地域の経済ニュース

    全国の経済ニュース