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社説:景気指数「悪化」 実態とリスク直視せよ

 国内の景気が後退している可能性がいっそう強まった。

 内閣府は3月の景気動向指数で、基調判断を「悪化」に引き下げた。「悪化」としたのは、第2次安倍晋三政権が発足した翌月の2013年1月以来6年2カ月ぶりだ。

 中国など海外経済の停滞から輸出と国内生産が落ち込んでいるのが主な要因という。

 企業や消費の現場からは「悪化」が実感に近いという声が多い。さらに米国と中国の貿易摩擦が激化し、長期化する様相に警戒感が広がっている。

 政府は「戦後最長の景気回復」が続いていると誇ってきたが、岐路にある経済の実態と先行きのリスクを直視せねばならない。

 景気動向指数は、景気に敏感な鉱工業生産、小売業販売額などから機械的に導かれる客観的な指標だ。1月の「下方への局面変化」に続く引き下げで、景気の先行き不安が深まったと言えよう。

 変調の指標は昨秋から表れていたが、政府は1月で景気拡大が戦後最長になったと説明。総合的な判断を示す月例経済報告は4月まで「緩やかに回復」との認識を維持している。

 雇用、所得などは底堅いとし、中国の大型経済対策の効果で今年後半の需要回復も見込んでいたが、その期待は揺らいでいる。

 米中貿易摩擦は「制裁合戦」に発展し、トランプ米政権はほぼ全ての中国製品を25%の追加関税の対象にすると発表。スマートフォンなど日本企業が多く部品供給する分野が加わり、影響は大きい。

 そもそも景気には拡大と後退の循環があり、後退しても落ち込みをいかに浅く、短くできるかに経済の活力が試される。

 だが、これまで長期の「回復」も、積極的な金融緩和と円安、世界経済の拡大が支えた面が大きい。企業が好業績を続ける一方、多くの国民に実感が乏しかったのは否めない。

 注目されるのは、政府が今月下旬に示す月例経済報告で「回復」判断を取り下げるかどうかだ。それによっては、10月の消費税率10%への引き上げ延期を求める議論への対応も迫られる。

 すでに税率引き上げを財源とする教育無償化や約2兆円もの増税影響対策が盛られている。このため延期は困難との見方が強い。

 外需頼みできた景気回復の問題点を洗い出し、家計の所得や消費とともに、社会保障をはじめ将来の安心にも資する政策運営が求められよう。

【 2019年05月15日 12時35分 】

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