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入試「学びに取り組む姿勢」評価 問われる課題解決力

明確な答えのないテーマについて議論する生徒たち(京都市北区・紫野高)
明確な答えのないテーマについて議論する生徒たち(京都市北区・紫野高)

 生徒たちが机を合わせ、互いに意見を交わし始めた。8月、京都市北区の紫野高で行われた1年生の「総合的学習の時間」の授業。話し合いの議題は「交通渋滞に悩む住民の利便性のため、世界遺産に登録された渓谷に新たな橋を架けるか、否か」。実際にドイツであった議論を元に、架ける派、架けない派に分かれて話し合った。

 同高は明確な答えのないテーマについて考える学習に力を入れている。1年生で議論の仕方を学び、2年生になると地球規模の問題について自分で課題設定して研究を深める。思考力や表現力、物事に向かう主体性、仲間と協力する力を体系的に磨くのが狙いだ。細谷瑞さん(16)は「議論では思いもしなかった意見や視点に気づく。それに対応する『アドリブ力』は将来役立つ」と手応えを語る。

 このような授業は「探究型学習」とも呼ばれ、取り組む高校が増えている。変化のスピードが速く、先行き不透明な社会。これからは、自ら課題を見つけて解決する力が必要になるとされるからだ。

 こうした動きを大学入試が加速させている。大学側が学力試験だけでなく、受験生の「学びに取り組む姿勢」を評価しようとしているのだ。

 全ての国立大が加盟する国立大学協会は、受験生の思考力や意欲を入試で評価しやすいよう、論文や面接を重視する「AO入試」や推薦入試などが入学定員に占める割合を、2021年度までに3割へ引き上げる目標を打ち出した。

 20年度からは各大学が、受験生に高校時代の調査書の入試での活用方法をあらかじめ示すことになった。関西学院大などの研究グループは文部科学省の委託を受け、高校での課外活動や探究学習を記録して受験生の主体性を評価するシステムを研究・開発。19年度入試から同志社大や立命館大など計11大学が一部入試でこのシステムを採用する。

 研究をまとめる尾木義久・関学大学長特命は「将来、大学入試は1点刻みのふるい落としの合否判定ではなく、思考力や学びに向かう力などを多角的に見るようになる。面接で意欲や人柄をみる就職活動のように一人一人を見つめる入試となり、大学と受験生とのマッチングの形に移行していくだろう」と指摘する。

 学習塾や予備校も対応に乗り出している。河合塾は16年度から教員向けのガイドブック「学びみらいPASS」を導入。大学生の行動パターンを卒業後も含めて追跡調査した基礎データを基に、生徒にテストを受けてもらって思考力やリーダーシップ、協働性などを可視化する仕組みをつくった。京都でも一部の高校が取り入れており、河合塾近畿本部の宮本正生本部長(57)は「生徒の数値化しづらい力を、イメージしやすくした」と説明する。

 一方、宮本本部長はこうした力の評価には慎重さが必要とも強調する。「生徒の意欲は本来、自発的なもの。『課外活動が入試で評価されるから取り組む』というように入試対策になってしまえば、本末転倒だ」と危ぐする。

 生徒の主体性や個性を評価する仕組みが、逆にその芽を摘むことにつながりかねない-。そんな矛盾をはらみながら、授業や入試は様変わりしていく。

 <学びアップデート 過熱する「人材」教育3>  社会の激しい変化の波は、大学をはじめ、高校や中学、小学校までも巻き込み、学びの形を変えようとしている。大きなうねりの中で、新たな教育を模索する現場を点描する。

【 2018年11月13日 13時57分 】

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