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校名か人物か、揺れる評価軸 学歴フィルター、学生は実感

全国の私立大学で就職支援をする担当者らが集まったセミナー(京都市中京区)
全国の私立大学で就職支援をする担当者らが集まったセミナー(京都市中京区)

 私立大の就職支援に携わる職員や企業の採用担当者ら約500人を前に、大企業の経営者が言葉に力を込めた。「グローバル社会では、横並びより、独創性を育む教育が重要だ」。7月、京都市中京区のホテルで開かれた「全国私立大学就職指導研究会」のセミナー。学生支援や採用に向けたヒントを探ろうと、会場からは盛んに質問が飛んだ。

 いま、企業は採用にあたって学生の知識だけではなく、他者と協調する力や、自ら物事に取り組む姿勢といった「人間力」を重視する傾向にある。経団連による企業の採用選考に関する昨年度の調査でも、採用で特に重視する点のトップが「コミュニケーション能力」、次が「主体性」だった。

 京都市内に本社を置く大手企業の採用担当者は「学外でさまざまな社会的体験をした学生が魅力的に映る」と話す。別企業の担当者は「会社で必要な力は入社後に教育できる」とし、学業成績よりも人物重視を強調する。

 一方で、採用時に学歴を重視する企業はいまでも多いとみられる。

 「所属している大学で説明会を予約したら満席と表示されたが、難関大学の名で予約をしたら席があった」。企業の人事に関する調査を行うHR総研(東京都)が6月に就職活動生1658人を対象に実施したアンケートでは、所属大学によって差別的な待遇を受けたという学生の証言があった。

 就職活動で、特定の難関大学の学生を優先的に取り扱うことは「学歴フィルター」と呼ばれる。HR総研のアンケートで、「学歴フィルターを感じたことがある」と回答した学生は45%に上った。

 HR総研によると、企業側は重点的に採用したい大学を「ターゲット校」として設定するケースがあるという。同総研が145社の採用担当者らに聞いたところ39%が設け、大企業では50%に上った。長年、就職戦線を見てきたHR総研の主席研究員松岡仁さん(55)は「(就職活動で)学歴が利用される現状は依然としてある」と指摘する。

 背景には、就職活動でインターネットの活用が進んだことも一因にある。採用情報の入手や応募が容易になり、大手や人気企業には多くの学生が集中するようになった。その中で一定の絞り込みをかける際、大学名で選別されるという。

 松岡さんは「過去の採用で優秀な人材がいた確率論から、特定の大学に注目する企業はある。上位大学の合格者は、高校時代まで努力してきたという事実はあるし、学力格差が広がる中で最低限の教養を担保できる安心感も大きいのだろう」と企業側の心理を読み解く。

 ある大学の就職支援担当者は「コミュニケーション能力や主体性は重要だが、企業が求めている学生像はそれだけではなく多様だ」と話す。

 人物か、学歴か。企業によって評価軸が異なる中、学生たちはこれまで以上にさまざまな能力を身につけることが求められている。

 <学びアップデート 過熱する「人材」教育5完>  社会の激しい変化の波は、大学をはじめ、高校や中学、小学校までも巻き込み、学びの形を変えようとしている。大きなうねりの中で、新たな教育を模索する現場を点描する。

【 2018年11月15日 13時50分 】

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