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専門教員不足“見切り発車”の小学校英語 来年度から本格導入

さまざまな形の絵を見て何に見えるか、英語で答える児童たち(京都市中京区・朱雀第二小)
さまざまな形の絵を見て何に見えるか、英語で答える児童たち(京都市中京区・朱雀第二小)

 2020年度から新学習指導要領に基づき小学校で英語の授業が本格的に導入されるのを前に、京都市など多くの自治体が新要領と同じ授業時間数を前倒しで確保している。教員の研修も進んでいるが、一方で小学校での英語教育の課題を指摘する有識者もいる。

 ■逆に英語嫌いの子ども増える?

 立教大の鳥飼玖美子名誉教授(英語教育学)は「英語を専門に教える教員が十分に配置されておらず、見切り発車。このままでは変な英語がすり込まれたり、英語嫌いの子どもが増えたりするのでは」と危惧する。

 「今後、AI(人工知能)が発達し、簡単な英会話なら自動通訳機が代替できるようになる。そこで人間は相手の意図を読み解く力や考える力など、AIができない力を育てるべき。その土台があれば中学から本格的に英語を勉強しても面白くなるし、英語で意見を主張できるようになる」と強調する。

 その上で「小学校英語が注目されているが、子どもの教育にとって英語が全てではない。算数や体育など得意なことはそれぞれ違う。英語だけにこだわって子どもをゆがめてしまうのはよくない。子どもは発達に応じて遊ぶことも大切。保護者も小学校での英語教育に多くを期待せず、子どもが自分の持ち味を生かし、自信を持つようにじっくりと育ててほしい」と呼び掛ける。

 また、立命館大の大山万容非常勤講師(外国語教育)は英語以外の言語にも着目する大切さを指摘する。「英語ばかり教えれば国際化の中で、英語が最も偉く、それ以外の言語は価値が低いという誤った認識が子どもたちにされる恐れがある」と懸念する。

 その上で「例えば、欧州では英語だけでなく、複数の言語を比較しながら言語の仕組みについて理解を深める活動をしている。日本でも英語の授業などに活用すれば、世界の多様性への興味も湧き、違う言葉を話す人とコミュニケーションする力が養われる」と提言する。

 ■「英語は楽しいという雰囲気づくり」

 「What’s this?(これは何?)」「It’s a cat(ネコです)」。3月上旬、朱雀第二小(京都市中京区)であった3年生の外国語活動の授業を訪ねると会話の大半は英語で行われていた。冨貴(ふうき)浩子教諭(33)がさまざまな形の絵を見せて何に見えるか尋ねると、児童たちが元気よく返答した。

 英語の言い方が分からないと冨貴教諭は別の言葉での言い換えを促し、それでも分からないと児童たちは「Japanese OK?」と断って日本語で答えたり、「Hint please」と助言を求めたりした。ほかに、ヘビの絵に「ロング」とヒントを出すなどして児童同士で当て合うゲームも行った。

 女子児童(9)は「単語が分からなくてもみんなでどう言えばいいか考えて言うのが楽しい」と話した。冨貴教諭は「英語は楽しいという雰囲気づくりや多くの英語を聞かせることを心がけている。自分の意思を伝えるというコミュニケーションの基礎を築きたい」と狙いを語った。

 新要領では、5、6年生は外国語科が年70コマ、3、4年生は外国語活動が年35コマ導入される。京都市は18年度に6~7割の学校がすでに同じ時間数を実施。19年度は全校が実施する予定だ。市教委は「学ぶ階段を緩やかにする」として、独自に20年度から1年生でも10コマ、2年生でも15コマの外国語活動をする予定で、18年度は7割の学校で実施された。

 ただ、京都府内では自治体によって授業コマ数が異なる。地域によって英語力に差がつく懸念もあるため、府教育委員会は昨夏、各自治体に対して新要領に近い時間数の前倒し実施をできるだけ行うよう呼び掛けた。

 教員の能力向上も課題だ。府内の小学校教諭からは「人によって力量に差がある」「DVDを活用しても型にはまった授業になる」などの不安の声が聞かれる。このため、各自治体とも数年前から研修に取り組んでおり、京都市教委も「教員のレベルも上がってきた。今後はもっと教員が英語を即興的に話せるようにし、児童のコミュニケーションを図ろうとする力を育みたい」としている。

【 2019年04月09日 10時30分 】

ニュース写真

  • さまざまな形の絵を見て何に見えるか、英語で答える児童たち(京都市中京区・朱雀第二小)
  • 2020年度から小学校で行われる外国語教育のイメージ
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