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性教育と「人が触れ合うこと」ダンサー康本雅子さんの試み

ダンサー康本雅子さんの性教育ワークショップ(京都市北区)
ダンサー康本雅子さんの性教育ワークショップ(京都市北区)

 Mr.Children、一青窈さんらの振り付けを担当し、NHKの「トップランナー」でも特集されたダンサー康本雅子さん=京都市左京区=が、性教育のワークショップを京都で続けている。子どもと性をめぐる問いに親子でどう向き合うのか。身体を通して考える試みだ。

 床をはいはいし、うごめく小学生と大人たち。出合ったら頭をくっつけてあいさつ。次はひじを使わず、這いずり回る。「赤ちゃんに戻るよ」。さらに、トカゲ歩きへ。胎内での動きへと、康本さんの声が参加者を導く。

 親子約30人が7月、北文化会館(北区)で体を動かす。康本さんが企画したワークショップ「マジな性教育マジか」。康本さんも小学5年と幼稚園の男の子2人の母。ネットで性の情報があふれる時代に、家庭で子どもとどう向き合えばいいのだろう。

 ゲスト講師の美術家池上恵一さんが紙芝居でザリガニやイルカの交尾、人間の場合を語る。母胎でヒトが生物の発生段階の姿を繰り返すことも紙芝居で紹介した。

 以前、親子対象の性教育講演会に参加して康本さんはショックを受けた。性犯罪から身を守ることを強調した内容だった。怖い、暴力…そこから性を子どもに植え付けていいのだろうか。

 「人と人とが触れあうことはすばらしいこと。身体のコミュニケーション、身体はうそをつけない。皮膚感覚と、身体の距離感を子どもに持ってほしくて」。性教育のプロではないけれど、アーティストとしてできることを考えた。

 ワークショップに2枚の模造紙が登場。子どもたちが男女に別れ、世間でいう「男の子らしさ」「女の子らしさ」とは何かを書き込む。「足がくさい」「半袖」と男の子たち。女の子は「ピンクが好き」「髪をくくる」…。康本さんは「男っぽいとこも女っぽいとこも、みんなどっちもあるよ。男の人が女の人を好きになるって限らないよ」と話しかけていく。性の多様性を子どもにどう伝えるか、心を砕く。

 2人組になって、相手の体に触れたり近づいたりするセッションに。触られた方は「嫌な感じ」「気にならない」などと伝える。途中でパートナーを交代。すると、あれれ? 同じ触れ方をしても、「大丈夫」「嫌だ」の距離感が変わる。子どもたちは人によって、身体の距離感が違うことに気付く。

 ワークショップの後半では、居合道四段の池上さんが「声を出すこと」を教えた。ホントに怖い時、嫌な時は声が出ない。「息を吸ってしまう」と池上さん。息を吐いて叫ぶ練習をする。康本さんは「大人の人に触られたら?」と子どもたちに問いかける。子どもが「拒否る」「触り返す!」といい、笑いが起きる。自分を守ることの大事さも、ちゃんと伝えたいと、康本さん。「私自身子どもの頃、学校でも家庭でも生理の話だけで、性を教えてもらえなかった。単なる科学的知識として教わる前に、自分で考えるだけの感受性を子どもに持ってほしい。性のことって、絶対に知識だけでは済まなくなるから」

 小学2年の息子と参加した上京区の女性(46)は「男の子が性にどういう興味を持っているのか、親でも分からない。将来子どもが性的なことに突き当たった時に、あのワークショップの時にこんなことしたよねと親子で話し合う共通体験があれば役立つ」と話す。ワークショップに参加していた助産師の女性(34)は「ダンサーの人から、身体を動かすことを通じて性や自分の身体に意識を向けることを教わるのはおもしろい」と話していた。

◇やすもと・まさこ 1974年生まれ。振付家、ダンサー。「ナ花ハ調」などコンテンポラリーダンス作品を海外で公演。ゆず、桑田佳祐、ケツメイシらのミュージックビデオやコンサート振り付け、演出家松尾スズキの舞台で振り付け、出演。

【 2019年08月05日 17時14分 】

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