出版案内
福祉事業団
京都新聞AR

琵琶湖の水草で鉄の5倍強度 滋賀県で新素材製造成功

水草からつくったセルロースナノファイバーの液体と、この液体を混ぜたプラスチック素材を手にする大山さん。右の機械で水草をすりつぶす(栗東市上砥山・滋賀県工業技術総合センター)
水草からつくったセルロースナノファイバーの液体と、この液体を混ぜたプラスチック素材を手にする大山さん。右の機械で水草をすりつぶす(栗東市上砥山・滋賀県工業技術総合センター)

 琵琶湖で異常繁茂して問題となっている水草から、鉄の5倍の強度を持つ新素材として注目される「セルロースナノファイバー(CNF)」を製造することに、滋賀県工業技術総合センター(栗東市上砥山)が成功した。CNFはあらゆる植物が持つ繊維から製造でき、京都が実用化に向けた先進地。同センターは日本一の湖を持つ県としての行政課題も解決できるとして、「厄介もの」の水草に着目した。担当者は「大半が捨てられる水草から、付加価値の高い新素材を生み出すことができる」と意義を説明する。

 開発を担当したのは、同センター主査の大山雅寿さん(37)。かやぶき屋根の減少から琵琶湖で刈り取られたヨシの需要が減少していることに着眼し、2008年からヨシを使ってCNFの製造に乗り出した。さらに、水草の処分にも困っていることに目をつけ、16年より水草からCNFを製造する研究に着手した。

 水草から繊維だけを取り出すため、薬品処理して不要物を除去し、機械で数十回かけてすりつぶす。液体状になったCNFは、さまざまな素材に活用することができ、同センターでは、滋賀県立大(彦根市)と共同で、CNFを混ぜた強度のあるプラスチック素材の開発にも乗り出している。ほかに企業からは、塗料やフィルムなどにも活用できないかといった要望が寄せられているという。

 CNFは京都での研究が盛んで、京都大と京都市産業技術研究所(京都市下京区)のグループは、CNFで強度を高めた樹脂を低コストで生産できる方法を開発した。大山さんも同研究所の勉強会に参加するなど、連携しながら研究開発を進めている。

 CNFは、原料となる植物が乾燥してしまうと製造しにくくなるが、水草は水分を大量に含み、廃棄物なのでコストもかからないのが活用する利点という。大山さんは「水草やヨシの有効活用は地域課題。企業に興味を持ってもらい、CNFの実用化に向け大きく展開できないか」と夢を描く。

■セルロースナノファイバー(CNF)

植物繊維をナノメートル(ナノは10億分の1)まで微細化した素材。鉄に比べて重さは5分の1だが、強度は5倍以上で熱を加えても変形しにくく、優れた補強用繊維として世界的に注目されている。国が産官学の共同開発組織を立ち上げ、製紙大手による量産計画もあるなど事業化に向けた動きが活発になっている。

【 2018年01月09日 08時28分 】

ニュース写真

  • 水草からつくったセルロースナノファイバーの液体と、この液体を混ぜたプラスチック素材を手にする大山さん。右の機械で水草をすりつぶす(栗東市上砥山・滋賀県工業技術総合センター)
  • 水草から作製したセルロースナノファイバーの拡大画像
京都新聞デジタル版のご案内

    環境・科学のニュース