出版案内
福祉事業団
京都新聞AR

iPS再生医療、パーキンソン病患者で治験へ 京大が国内初

iPS細胞のパーキンソン病への応用
iPS細胞のパーキンソン病への応用

 iPS細胞(人工多能性幹細胞)から作った神経細胞をパーキンソン病患者へ移植する再生医療の治験を京都大が始めることが29日、関係者への取材で分かった。近く参加患者を募り始める。iPS細胞を使った再生医療では目の病気「加齢黄斑変性」について患者対象の臨床研究が行われているが、保険適用を見据え厳格な基準で実施する治験は国内で初めて。

 パーキンソン病は、脳の黒質という部分で神経伝達物質ドーパミンを出す神経細胞に異常なタンパク質が蓄積し、神経細胞が失われて発症する。難病に指定され、国内の患者は10万人以上とされる。歩きにくくなるなどの運動障害や認知症、自律神経障害といったさまざまな症状がある。

 今回の治験は、あまり進行しきっていない患者数人が対象。拒絶反応を起こしにくいタイプのドナーの細胞からあらかじめ作製して備蓄しておいたiPS細胞でドーパミン神経細胞を作り、頭蓋骨に穴を開けて脳に移植する。数年間の長さで安全性と効果を確認する。京大iPS細胞研究所の高橋淳教授らが、サルを使った実験で効果や安全性を確認するなど準備を重ねてきた。

 iPS細胞を用いた再生医療の臨床研究は、既に加齢黄斑変性の患者への移植が行われ、重症心不全の患者などに対する計画も進む。再生医療の実用化が現実味を帯びる中、脳という複雑な臓器の病気であるパーキンソン病への応用は、iPS細胞を活用した医療の可能性を見極める上で重要なステップとなる。

 iPS細胞の医療応用としては、再生医療に加え、患者本人から作ったiPS細胞を活用した創薬分野がある。京大は既にiPS細胞を使って見つけた治療薬候補で、筋肉の中に骨ができる希少難病「進行性骨化性線維異形成症(FOP)」の患者への治験を実施している。

■根治には道半ば

 京都大がiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使ったパーキンソン病の治験に本格的に乗り出した。この手法が確立すれば新たな治療の選択肢となり、患者にとって朗報となるのは間違いない。一方で今回の移植は体の動かしにくさなど運動障害が対象で、認知症などほかの症状への効果はあまり期待できない。再生医療以外の治療法は引き続き重要で、根治へは道半ばだ。

 現在のパーキンソン病治療の主流は、ドーパミンの補充などを目的とした薬物療法だ。運動障害が回復する効果はあるが、完全には神経の死滅を止められないため、10年以上経過すると効果が薄れるケースが多い。iPS細胞から作ったドーパミン神経細胞の移植を合わせれば、長期間にわたる治療法として期待が持てる。

 だが今回の移植でも、パーキンソン病の原因とされる神経細胞への異常タンパク質の蓄積を抑えられる訳ではない。異常タンパク質が黒質だけでなく脳のほかの場所に広がれば認知症が発症する可能性がある。移植後に再び蓄積する恐れもあり、ほかの治療法開発の重要性は変わらない。

 副作用も慎重に判断しなければならない。iPS細胞から作った神経は本来ドーパミン神経があった黒質とは違う場所に移植する。過剰にドーパミンが出過ぎて不随意運動など副作用を引き起こす可能がある。サルの実験で安全性を確認したとはいえ、注意が求められる。

 iPS細胞を使った今回の治療法が確立しても、完全に健康な状態に戻せる「夢の医療」となる訳ではない。新たな治療法の道を開く可能性を秘めている一方、ほかの治療法と合わせて的確に意義を見極める必要がある。

【 2018年07月29日 23時13分 】

ニュース写真

  • iPS細胞のパーキンソン病への応用
京都新聞デジタル版のご案内

    環境・科学のニュース