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コウノトリ近親婚防止で世界初挑戦 托卵のひな、すくすく育つ

托卵によりふ化した2羽のひなとコウノトリの雄親(8日午後4時35分、京都府京丹後市久美浜町市場)=佐々木さん提供
托卵によりふ化した2羽のひなとコウノトリの雄親(8日午後4時35分、京都府京丹後市久美浜町市場)=佐々木さん提供

 京都府京丹後市久美浜町の人工巣塔で営巣する野外で生まれた国の天然記念物コウノトリのペアについて、兵庫県立コウノトリの郷公園(豊岡市)が産卵した卵を別のペアの卵と交換して育てさせる「托卵(たくらん)」を実施している。近親婚を防ぎ遺伝的多様性を保つ試みで、4月中旬にふ化した2羽が順調に育っている。コウノトリの野外近親婚ペアで托卵を実施するという世界初の挑戦を追った。

 五月晴れの下、巣塔で育つ2羽のひな。2015年と16年に豊岡市生まれの姉と弟ペアが餌を与える。巣塔を建てたコウノトリネット京丹後のメンバー佐々木信一郎さん(76)は「きょうだいだから繁殖は期待していなかったけど、やっぱり赤ちゃんはかわいいね」と目を細める。

 郷公園によると、托卵は昨春に続いて2度目。昨年も同じペアで実施したが、年齢の若い雄親が抱卵せず、ふ化に至らなかった。今春は産卵した4個を4月初旬に回収し、野外個体と血縁関係が薄い同公園生まれの卵2個と擬卵2個を置いた。19日に餌をやるための吐き出し行為が無事に確認されたという。

 郷公園が托卵に踏み切った背景には、野外個体の近親婚の増加がある。コウノトリがつがいを解消することはまれであるため、郷公園はこれまで近親婚ペアについては、巣塔にネットをかぶせるなど営巣を防いできた。

 2005年の初放鳥以来、野外個体は140羽に増加した。それに伴い、近親婚ペアが今後も後を絶たないことが予測される。巣塔が無駄に占有されることや繁殖機会が奪われることなどを考慮して托卵の可能性を模索してきた。郷公園は「托卵方法が確立できれば、従来の放鳥だけでなく、遺伝的多様性を高める方法に新たな選択肢が加わる」と期待する。

 今回の世界初の試みを可能としたのは、野外個体の識別をほぼ全て足環で管理していることが挙げられる。ただ、野外での個体はさらに増えていく。「近親婚を托卵で全て対応していくのは難しい」と高垣正広副園長は語る。

 托卵で誕生したひなは順調にいけば5月末に巣立つとみられる。近親婚は野生のコウノトリが絶滅した理由の一つだ。野生復帰したコウノトリが繁殖し、再び全国で根付くための挑戦が続いている。

【 2019年05月13日 10時30分 】

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