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社説:温室ガス新指針 「パリ協定」に実効性を

 温室効果ガスの排出量をより正確に算定するための新指針が、京都市で開かれていた国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の総会で採択された。

 京都議定書に代わる新しい地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」の本格始動を来年に控え、実効性のある対策指導のために最新の科学的知見を踏まえて見直したものだ。

 パリ協定は今世紀後半に脱炭素社会の実現を目指す長期目標を立てている。温室効果ガスの排出量の把握は温暖化対策の基礎であり、より精緻な算定方法が示された意義は大きい。先進国と途上国が協力して実行に移さなければならない。

 IPCCは地球温暖化に関する最新の研究成果を各国の政策決定者に示すことを主な目的とする科学者と政府関係者の国際組織だ。

 数年おきに温暖化の予測、影響、対策をまとめた評価報告書を公表し、温室効果ガスの排出量を算定する指針も作っている。

 今回の新指針では、これまで考慮されなかった水素の製造に伴う排出量の計算方法などを盛り込んだほか、石炭の採掘や輸送で漏れ出したり、森林開発で変化したりする温室効果ガスもより正確に分かるようにした。

 算定精度の検証のため観測衛星のデータを活用する方針を追加したのも特色の一つだ。

 新指針は年末の第25回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)で合意されれば、正式に導入される。

 だが、算定方法が厳しくなるため、統計やデータの収集能力が十分にない途上国が反発し、先進国との対立が再燃することを懸念する声も出ている。

 各国が納得して受け入れられるようにするには、途上国を先進国が資金や技術の面で支援する仕組みの検討を急ぐ必要があろう。

 パリ協定は、歴史上初めて先進国・途上国の区別なく気候変動対策の行動をとることを義務づけた歴史的な合意である。

 昨年12月のCOP24では、全ての参加国・地域が、温室効果ガスの削減目標に関する情報の提供や削減の進み具合の検証を、共通のルールで進めることにした。

 共通ルールでの排出削減は、先進国のみに厳しいルールが課せられるのは不公平などとして、パリ協定離脱を表明した米国を引き留めるためにも必要だ。

 パリ協定を全地球の総意として対策を強めねばならない。

【 2019年05月15日 12時39分 】

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