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社説:バイオマス発電 「エコ偽装」を排除すべき

 木くずやパーム油、ヤシ殻など、自然由来の素材を燃やして発電するバイオマス発電をめぐり、どのようなあり方を再生可能なエネルギーとして認めるか、という議論が起きている。

 素材そのものは二酸化炭素(CO2)排出量が少なく、地球温暖化対策に有用としても、栽培や加工、運搬の段階で環境への負荷が高かったり、直接的な環境破壊につながっているものがある。

 見かけ上の「エコ」をしっかり排除する政策措置が必要ではないか。

 とりわけ問題となっているのは、海外から輸入したパーム油やアブラヤシの殻、木くずを固めたペレットを燃やす発電だ。

 再生エネルギーを一定価格で電力会社が買い取る固定価格買い取り制度(FIT)が2012年にスタートして以来、パーム油の輸入が10万トン以上増加して約75万トンになった。

 パーム油の発電電力もFITによる買い取り対象となり、事業申請が相次いだ。現在、国内で計画されているパーム油発電が全て稼働すると、輸入量は5倍近くになるとみられている。

 食品にも幅広く使われるパーム油生産のため、インドネシアやマレーシアではアブラヤシを大規模に栽培するプランテーション開発が進み、過去20年間で約350万ヘクタールの熱帯雨林が失われたという。

 この上、燃料需要も増加すれば、プランテーション開発が加速するのは確実だ。

 大量のCO2を蓄積している熱帯雨林や泥炭地の開発は温暖化の加速に直結する。

 日本国内で再生可能エネルギーを普及させても、そのために海外で森林を破壊しては、温暖化防止にならない。

 こうした状況に対し、日本国内の環境保護団体などが改善を求め始めた。政府もパーム油など輸入バイオマス燃料の増え過ぎを事実上、認めて対策を模索し始めている。

 経産省は今年4月、有識者によるワーキンググループを設置し、FITで扱う燃料の定義を議論している。

 ポイントになるのは、生産過程で出るCO2量など、全体的な環境負荷についての情報開示や追跡可能性で、第三者による認証制度の創設も論点だ。

 環境NGOは、プランテーション開発に伴う環境アセスメントの実施など、生産地の環境負荷の報告も重要と指摘する。

 バイオマス燃料の生産から運搬、消費までにどれだけの温室効果ガスが排出されるかについては、経産省が試算し公表している。

 それによると、東南アジア産のパーム油やペレットは天然ガスに匹敵する温室効果ガス量になる。これでは再生可能エネルギーとは言えない。

 そもそもバイオマス燃料の活用については、エネルギーの地産地消や小規模分散化が狙いで、国内の森林の間伐材などを積極的に利用することを想定していた。

 だが、実際には海外からの安いペレットやパーム油を使う業者がほとんどだ。

 国は見込み違いを早急に修正し、実質的なエコになるよう、制度を整える必要がある。

【 2019年08月11日 16時11分 】

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