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戦没者追悼式

 73年前の8月初旬、栃木県の奥日光に同級生らと疎開していた当時11歳の天皇陛下は、戦況の説明に訪れた大本営幹部にこんな質問をした。「なぜ、日本は特攻隊戦法をとらなければならないの」▼私たちはギクッとした-と側近が記している。戦死が前提の特攻という戦法には誰もが疑問を持っていたが、口に出せる時代ではなかった。この質問で「十分すぎるほど殿下のお気持ちはわかった」(高杉善治著「天皇明仁の昭和史」)▼多感な少年時代、戦時の雰囲気にさまざまな思いを抱かれたのだろう。終戦直後の食糧難の折には、慣れない手つきで農作業も体験された。戦中・戦後の記憶は、後に平和を願う強い思いの原動力になったように思える▼平成で最後となったきのうの全国戦没者追悼式のお言葉には「長きにわたる平和な歳月に思い」との表現が加わり、「深い反省」が4年連続で使われた。「平和」も1カ所増えた▼お言葉は、自ら鉛筆を握って推敲(すいこう)を重ねるという。今回のお言葉からは、戦争の記憶が風化することを懸念し、平和の歩みを語り継いでほしいとの願いも読み取れる▼来年の追悼式からは、5月に即位する皇太子さまが参列する。戦争の時代を経験してきた陛下の思いは、戦後生まれの新天皇にどのように引き継がれるのだろう。

[京都新聞 2018年08月16日掲載]

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