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電卓50年

 駆け込み買いを促すチラシを手に、迷っている人も多いのではないか。消費税率が5%から8%に上がる日が迫ってきた。消費税引き上げは17年ぶりだ▼家計簿をつけるときなど、計算に電卓は欠かせない。その電卓の発売が発表されたのが、今から50年前のきょうのことだ。昭和39年、東京五輪が開催された年でもある▼早川電機(現・シャープ)とソニーが、それぞれ開発した。世界で初めてトランジスタを使い、発売価格は53万円もした。レジほどの大きさがあり、重さは25キロ、小型自動車1台の値段と同じだった▼早川電機の開発陣は「電卓を個人に」を合言葉にしたが、社内には「そんな高いモノは売れない」と異論もあった。チームが説得に使ったのが、「江戸時代から一人ひとりが計算道具(そろばん)を持ち歩いているのは日本人だけだ」という事実だった▼江戸の初めには算術の指南書「塵劫記(じんこうき)」が出版された。庶民の子が読み書きを習った寺子屋では、そろばんの教科書にも使った。江戸期の高い数学水準が電卓を生み、半導体の開発につながったともいえる▼電卓を傍らに思い悩めるのも、あと2週間。「いくら安くても、買わなければ消費税は取られない」「欲しくなければ、タダでも買わない」の至言を胸に刻み、もう少し迷ってみるか。

[京都新聞 2014年03月18日掲載]

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