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ゾウの森

 大型連休中、京都市動物園は家族連れやカップルでにぎわった。中でも人気はゴリラ親子の新居で、体重160キロの父親モモタロウが樹木に見立てた支柱を器用に登り、2歳になった息子ゲンタロウが愛嬌(あいきょう)を振りまくたびに歓声が飛び交った▼その園内では「ゾウの森」の整備が着々と進む。アジアゾウ1頭が暮らす現ゾウ舎を約6倍の広さに拡充し、ラオスから子ゾウ4頭を迎える▼正岡子規が<春風や象引いて行く町の中>と詠んだ明治中期、まだ動物園は東京・上野にしかなく、ゾウは珍しかったのだろう。今はアジアゾウだけで国内に80頭近くいる▼ただ絶滅危惧種だけに、生息する国からの新たな輸入は容易ではない。繁殖も思うように進まず、「少子高齢化」は深刻だ。50年後には日本からゾウがいなくなるという試算もある▼そんな中、市動物園は奇跡ともいえる子ゾウの確保に成功した。国交樹立60周年を踏まえてラオスに粘り強く働き掛け、4月下旬、トンシン首相から寄贈の確約を得た▼4頭は今冬にも来園し、群れで飼育して10年以内の2世誕生を目指す。国内のゾウ飼育数が明治期に逆戻りしないように。未来の子どもたちも今と同じようにゾウと触れ合えるように。ゴリラをはじめ希少動物の繁殖実績を誇る「京都」への期待は大きい。

[京都新聞 2014年05月11日掲載]

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