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ネクタイの季節

 「ネクタイは必ず締めないと駄目なのですか」。入社したての新人記者研修を担当していたころ、よく質問された。記者は身なりには寛容な自由業なはずでしょう、と彼らの顔に書いてあるように思えた▼「自分次第」がわたしの答えだった。「『こんな格好ですいません』と引け目を感じず相手と話せるなら、ノーネクタイも結構。でもその自信がないならネクタイは必要だ」と▼ネクタイ、上着なしで仕事をするクールビズも間もなく終わる。環境省は10月末までと提唱するが、多くの企業は今月末に終える。この秋は涼しく、おでんも居酒屋に復活した▼5カ月もネクタイなしの生活である。京都の西陣織など産地の悲鳴が聞こえる。少子化もあり、この10年間に国産ネクタイの生産量は3分の1にまで落ち込んだとの推計もある▼ネクタイの起源は、17世紀にフランス軍に参加したクロアチア兵が首に巻いたスカーフとされる。妻や恋人が無事の帰還を祈ったお守りとの説もある。これが派手好みの国王の目にとまり、上流社会から広まったと伝わる▼10月1日は業界団体が制定した「ネクタイの日」でもある。明治17年に東京の帽子商が国産第1号のネクタイを製造した。それから130年、長らくのごぶさたをわび、秋物のネクタイを買い求めようか。

[京都新聞 2014年09月19日掲載]

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