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統一と個性

 丸い背中と、べんべんたるおなか、垂れ下がった大きな耳。その2頭の存在感に圧倒された。養源院(京都市東山区)の杉戸に俵屋宗達が描いた「白象図」(重 要文化財)である。来年迎える「琳派400年記念祭」のポスターに引かれ、久しぶりに寺を訪ねた▼琳派は狩野派と並ぶ画壇の一大潮流として日本の絵画史上 に輝く。本阿弥光悦や宗達によって産声を上げ、尾形光琳・乾山が継承、酒井抱一らが昇華させた▼美術史家の河野元昭氏によると、大和絵を母体にする琳派の 技法は、「やさしく、柔らかく、しなやか」。血脈や手本を重じた狩野派と違い、私淑や独学のため、美意識の統一の中にも個性が際立ったという▼統一と個性 は教育の尽きぬ課題だろう。先月、中教審が小中学校の道徳の時間を教科に格上げし、教科書と評価の導入を文部科学相に答申した▼価値観の押しつけはもって のほか。教科書に倣(なら)うばかりで、評価を気にして本心を隠す「いい子」ばかり増えねばいいが▼かつて、「しなやかな道徳」を唱えた故河合隼雄氏の小 学校での模擬授業をみた。「みんなは一人ひとり違う。世界でただ一人しかいない」。ここから学びは始まった。自分を見つめ、違いを認め合う。子どもたちだ けではない。手本になれるか、大人の責任こそ重い。

[京都新聞 2014年11月21日掲載]

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