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贈り物

 少女は、困っている子がいれば寄り添って声をかけてあげられる、とても心の優しい子だったという。東京の病院で脳死と判定された女の子の臓器が京都や大阪で重い病に苦しむ子どもに移植された▼提供を決めた両親の談話が紙面にあった。<娘はきっと賛同してくれると信じています/娘が短い人生の最期に他のお子さんの命を救うことになれば、残された私どもにとっても大きな慰めとなります>。この言葉が絞りだされるまでに、どれほどの涙と苦悩があったろう▼かつて医療問題の連載記事に、臓器移植に携わる看護師の方から手紙をいただいた。「移植の現場は世間で『命の贈り物』と伝えられるような、きれい事だけで済みません。提供側と受ける側の壮絶な思いがせめぎ合っています」▼iPS細胞から臓器をつくり、移植できる日が来るかもしれない。けれど、現実には今この瞬間、臓器移植でしか助からぬ命がある▼6歳未満の臓器提供は今回が2年半ぶり、2度目。その陰に提供に踏み切れなかった多くの親の葛藤と、移植を待ちながら果たせなかった幾つもの無念がある▼<人はいつどちらの立場に立つか分からない>。少女の両親がつづっている。まだ体にぬくもりが残るわが子へ、重い決断をしたその立場に、自分なら立てるだろうか。

[京都新聞 2014年11月27日掲載]

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