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出生ゼロ

 「ショックな数字だ」。今年初め、山城南部にある複数の小規模自治体の首長会見では、「ゼロ」が話題になった。京都府内で人口最少の笠置町で昨年の出生がなかったことだ▼隣接する和束町や南山城村は「人ごとではない」と受け止めた。人口減少、少子高齢化が進む中でインパクトのある数字だろう▼観光が売りの笠置町で昨年、観光協会が解散する事態になった。府内で高齢化率が最も高い伊根町では11月の町議選で立候補者が定数10に満たず異例の欠員が生じた。個別事情はあろうが、地方の現場でひずみが出ている▼自治体の危機感の背景に、有識者による「日本創成会議」が昨年、全国の896市区町村を「消滅可能性都市」とした試算がある。第1次安倍政権の総務相だった増田寛也氏が座長を務めており、政府寄り、危機感をあおっているなどの指摘もある▼首都大学東京の山下祐介准教授は著書で、同会議が地方中核都市への政策の集中を提言していることなどを、他の地域の切り捨てだと批判し、「道は一つではない」と訴える▼安倍政権肝いりの「地方創生」が本格的に始まる。地域再生策は、個々の多様性を尊重し、自治体自らの持続可能な努力を引き出せるかどうかが重要だ。「この道しかない」という安倍流にならぬか注視したい。

[京都新聞 2015年01月18日掲載]

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