凡語 京都新聞トップへ

ハトと平和

 洋の東西を問わずハトは古来、神聖な鳥とされてきた。西洋では平和の象徴と考えられた。ノアの箱舟から放たれ、オリーブをくわえて戻ってきたことにより人々が大洪水の終息を知ったという旧約聖書の記述に由来すると言われる▼日本では八幡神の使いだ。その神を祭る八幡市の石清水八幡宮では、表参道の鳥居に掛かる扁額(へんがく)の「八」の文字は2羽のハトが寄り添ったようなデザインで描かれ、ハトのお守りやおみくじも授与される▼八幡宮の麓にある松花堂美術館で今、ハトにちなんだ美術品の展示が行われている。八幡宮関連の絵や彫刻が並ぶほか、平和や夫婦和合のシンボルとして工芸品や茶碗などの意匠に取り入れられてきたことが分かる▼終戦直後の1946年に発行された5銭硬貨も展示されており、その図柄がハトだと知った。戦時中の5銭硬貨は雄々しい姿の金鵄(きんし)(金色のトビ)で、戦争が終わり、平和の象徴であるハトが採用されたという▼一歩ずつ、戦後の道のりを踏み出していった国の姿がうかがえる。それから70年。現政権の姿勢には、長年少しずつ積み重ねたものが崩れてしまわないかと思わずにいられない▼そういえば、鳩(はと)の字源は鳴き声の「九」に「鳥」だという。平和国家として大切にしてきた数字が、ちゃんと入っている。

[京都新聞 2015年02月16日掲載]

バックナンバー


凡語 書き写し
 
著作権は京都新聞社に帰属します。
ネットワーク上の著作権について(日本新聞協会)