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今どきの不如意

 賀茂川の水、双六(すごろく)の賽(さい)、山法師。ご存じ白河天皇がままならぬと嘆いた三不如意である。現代のものならどうか▼例えば、スマートフォンだ。契約会社を乗り換えると、端末が働かなくなる。「シムロック」という暗号がかかっているからだ。各社はロックで囲い込んだ利用者の料金を基に、新規客向けの値引き合戦を続ける。ロックされた人が割を食う。何ともままならぬ▼総務省は5月以降に販売する携帯端末から、ようやくロック解除を各社に義務付けるという。なぜ今まで認めてきたのか。実際にどうなるのか。疑問が先立つ▼あるいはテレビだ。電波を有効利用するからとアナログ放送が止められて約3年半。それでも全国で約50万世帯が、ケーブル局を通じたデジタル放送のアナログ変換を利用する。買い替えの余裕がなかったり、「まだ映る」とブラウン管で粘っていたり。後者の当方は、意外に多い御同輩が支えだった▼その変換も、今月から打ち切られ始めた。はて、国民に強いた負担に相応する効果があったのか。放送局と組んで執拗(しつよう)に宣伝した当時と、同じほどの熱意で総務省は国民に知らせてほしいものだ▼拙宅の1台も鉄くずになる。自分の物なのに、ままならぬ。どちらを向いているか分からない電波・通信行政が、当世の不如意か。

[京都新聞 2015年02月19日掲載]

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