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ジビエ料理

 人の手で育てられた豚、牛、鶏の肉を口にする機会は多くても、日本人の食卓に野生の鹿肉料理が並ぶことはほとんどない▼欧米では日常的なジビエ(野生鳥獣)料理を普及する行事が、丹波と中丹地域で2月に相次いだ。背景にあるのは、深刻化する獣害だ▼高齢・過疎化する地で懸命に維持される田畑にようやく実った作物が、シカやイノシシに奪われる。森林の下草が食べ尽くされ、保水力が弱まって災害の恐れも強まる。餌が少ない冬場は特に人里へ近づく▼京都府が福知山市で催したフォーラムで、猟師やフランス料理シェフ、野生動物研究者らが、野生獣を食資源として活用する方策を討論した。福知山、綾部、舞鶴3市の飲食店28軒は、2週間にわたってジビエメニューを一斉に提供した▼南丹市日吉町の狩猟セミナーで、猟師は「暮らしを守るために重要な役割を担う」と訴えた。都市住民が同市美山町でシカの解体を体験し、その場で食べ、命と食について話し合った▼ジビエ食材は、インターネットで取り寄せることができる。それよりも、シカやイノシシと隣り合わせの里へ足を運ぼう。田畑や森の手入れを断念せざるを得ない厳しい実態を目の当たりにするだろう。人と自然の営みに食生活が支えられている重みを、五感で受け止めたい。

[京都新聞 2015年03月09日掲載]

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