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コンピュータ将棋

 「人類やっと勝ち越し」。いささかオーバーな見出しを付けた新聞もあった。それほど将棋ファンには待望の瞬間だったが、どこかすっきりしない幕切れでもあった▼プロ棋士とコンピューターソフトによる5対5の電王戦。2勝2敗の後、阿久津主税八段がわずか21手でソフトを破り、勝ち越しを決めた▼2013年に始まり、過去2回はソフトの勝ち。団体戦は今年で最後といい、後がない棋士側はコンピューターに強い若手をそろえ、第2局ではソフトを反則負けに追い込んだ▼最終局も事前の研究で発見したソフトの弱点を突く作戦が成功。なりふり構わずか、との声も聞かれたが、「素直にうれしいという感じはしない」という阿久津さんの言葉が微妙な雰囲気を物語っている▼ソフト相手に奇手を放った故米長邦雄永世棋聖。投了寸前の将棋を打ち続けて引き分けに持ち込み、涙した塚田泰明九段と同様、1秒に数億手読むソフトの強さを知ればこその作戦であり、それが人間味というものだろう▼コンピューターにプロ棋士が負けるのはいつか、の問いに「2015年」と羽生善治4冠が答えてから約20年。棋士はコンピューターに勝ったといえるのか。羽生さんにすっきりさせてほしいような、夢のまま残して置きたいような「節目の年」である。

[京都新聞 2015年04月14日掲載]

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