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おかんメール

 電話で言えば平凡なメッセージが、メールでは誤字脱字や変換ミスを含んで意外なユーモアを生む。親から子へ送られた実例文を集めた話題の本「おかんメール」(扶桑社)がほほえましい▼65歳の母から突然「かれ、できたよ」。父が亡くなって16年、老いらくの恋かと思いきや、「カレーできたよ」の打ち間違い。別の母親はわが子に「子宮帰れ」。どんな至急の用があったのか▼「まご!まご埋まれました!まご!」。待ちに待った孫の誕生に興奮しての一報。早く家族に知らせようとする気持ちが、漢字の変換ミスから生き生きと伝わってくるようだ▼慣れない手つきでスマートフォンをいじり、一文字ずつ打ち込む親たちの姿が目に浮かぶ。もしかするとあえて誤字のまま送信しているのかもしれない。何かとぎくしゃくしがちな親子関係を円滑にする、今どきのコミュニケーション術か▼いつもそばにいて、口うるさくて、面倒。でも見えない絆があるからこそ、ミスだらけの文章でも通じ合える。おかんメールから伝わってくるのは、そんな温かさだ▼今年の母の日は過ぎてしまったけれど、少し時期外れの方が照れずに送れるかもしれない。「お母さん、ありがとう」。「急にどう菓子たん?」なんて、暗にプレゼントを求める返信が来たりして。

[京都新聞 2015年05月13日掲載]

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