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前進、前進

 国立京都国際会館の大きなホールに明朗な声が響く。「私の元気の源は、若い人とともに前進したい、という思い。前進、前進、前進、また前進」。御年103歳。日野原重明さんである▼先月、日本医学会総会の記念講演だった。京都大医学部を卒業後、軍医から市井に転じ患者本位の医療を先導した。今も全国の小学校を回り「いのちの授業」を続ける▼子どもたちは「希望」だから、懸命に語りかける。自分の時間を人のためにも使ってほしい。人を、恕(ゆる)してほしい。それが争いをなくし、命を尊ぶことにつながる、と▼国会では安全保障法制と並行し、憲法改正の議論が本格的に始まった。環境権など、世論の抵抗が少ない項目から国民投票の発議を目指し、「改憲を一度味わってもらう」(自民党幹部)という▼あまたの命が失われた戦争を経て、35歳で新憲法の公布を体験した日野原さんは、子ども向けの著書で記す。憲法は、えらい人が変なことをしないよう国民を守ってくれる言葉の壁です-。その壁を崩し、権力を守る新しい壁を作る所存か。自民党の改憲草案には国民を縛る項目が並ぶ▼日野原さんは講演で訴えた。3年後、憲法改正の国民投票は18歳から有権者になる。「子どもたちが反対していけば、実現しない」。希望へ。前進、前進。

[京都新聞 2015年05月26日掲載]

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