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派遣の行方

 自衛隊の海外派遣をめぐる国会論戦の裏で、もう一つの「派遣」の行方に不安を募らせる人たちがいる。全国で110万人を超える派遣労働者だ▼その受け入れ期間の制限をなくす労働者派遣法改正案の衆院審議がヤマ場を迎えている。現在は専門職を除き最長3年だが、人を入れ替えれば企業はずっと派遣を使えるようにする内容だ▼「生涯派遣の人を増やす」との批判に対し、政府は多様な働き方を広げ、キャリア向上で雇用安定につながると繰り返す。そうした展望をどれだけの派遣労働者が信じているだろうか▼改正案は派遣会社に教育訓練に加え、派遣先で3年になる労働者を直接雇うよう依頼するか、別の派遣先紹介などを義務付ける。だが派遣会社が得意先を失う直接雇用を求めるのは自己矛盾で、単なるお願いなら実効性は乏しい▼「正社員への道が開かれる」とうたう安倍晋三首相だが、連合が先週開いた集会で派遣労働の女性は「待遇改善を求めたら切られた」と悔しさを訴えた。これが多くの現実だろう▼政府・与党は維新の党を抱き込み、週内に衆院を通過させる構えだ。急ぐのは、派遣先が期間制限を超えて働かせた場合は社員に雇う現行法規定の10月施行が迫るためだ。適用を避けたい企業を守り、労働者の安心は二の次でいいのか。

[京都新聞 2015年06月16日掲載]

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