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ギリシャ危機

 古代ギリシャの都市国家アテナイでは市民の発言権が強かったという。市民権を持つ成人男性なら誰もが参加できる民会がアゴラと呼ばれる広場で開かれ、国政をめぐる重要案件を自由に討議し、多数決で議決した。直接民主制の典型とされる▼財政危機に陥ったギリシャのチプラス政権が突如、財政緊縮策の受け入れの諾否を国民投票に委ねた。民会を踏襲したかにみえるが、ここ一番の決断を国民に押し付ける無責任さに驚く▼「ユーロ圏に残留しても旧通貨ドラクマが復活しても国民生活が苦しいのは同じ」-アテネ市民の嘆き節だ。確かに緊縮一辺倒では未来はない。かといって放漫財政と決別しないと国際社会からさじを投げられる▼国民投票は5日に実施される。「煙を逃げて火に飛び込む」という古いことわざがギリシャにある。風刺作家ルキアノスの言葉と伝わるが、眼前に迫る不安から逃れようとして最悪の選択をする愚を戒める。2010年春のギリシャ危機を再来させぬ賢明な判断を期待したい▼翻って、わが日本の財政も借金漬けは同じ。国の借金残高は1千兆円を超え、かの国が抱える債務の20倍以上に達している▼世界随一の借金大国であり、財政健全化に背を向けていては破綻を招く。ギリシャの危機は決して対岸の火事ではない。

[京都新聞 2015年07月02日掲載]

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