凡語 京都新聞トップへ

地底との対話

 きのうは七夕。人は古来、空を眺めて思いをめぐらせてきたが、地底にはそれほど関心が向かない。見えないからで、見えたら面白い。そんな体験をさせてもらった▼先週末、京都大阿武山観測所(大阪府高槻市)の改装後の内覧会で、観測所のある小高い山から大阪平野を一望して、コンピューターグラフィックスでその地底に潜った。矢守克也教授が本紙コラム「現代のことば」で紹介していた<阿武山アースダイバー>である▼山から川で運ばれた土砂を取り除くと、生駒や有馬高槻などの断層帯に囲まれた深さ2千メートル級の巨大くぼ地が見えてくる。約100万年前は平らだったのが、地震のたびに隆起と沈降を重ね姿を変える▼「アースダイバー」を提唱する人類学者の中沢新一氏が会場に顔を見せた。これまで自然地形と街、精神の関係に光をあててきたが、特に東日本大震災後は「人間と自然のつながりを取り戻さないといけない」との思いが強いという▼口永良部島(くちのえらぶじま)などで噴火が相次ぎ、南海トラフ巨大地震の確率は高まっていると言われる。そんな地底の動きをよそに地上では原発が再稼働を待つ▼物理学者の寺田寅彦は「昔の日本人が集落を作り架構を施すにはまず地を相することを知っていた」と書いている。アスファルトの下を見つめたい。

[京都新聞 2015年07月08日掲載]

バックナンバー


凡語 書き写し
 
著作権は京都新聞社に帰属します。
ネットワーク上の著作権について(日本新聞協会)