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「玉音」の公開

 ほとんどの国民が初めて聞いた、あの人の声だったそうだ。昭和天皇が敗戦を告げる「終戦の詔書」。8月15日正午からラジオ放送があった「朕(ちん)深ク世界ノ大勢ト帝国の現状トニ鑑(かんが)ミ」に始まる朗読である▼録音テープのなかった時代、音源はレコード盤だ。今も耳にする音声は複製だという。宮内庁はきょう、終戦70年を前に原盤と、原盤からデジタル録音した音を初めて公開する▼録音は、「日本のいちばん長い日」と呼ばれる前日深夜に行われた。半藤一利さんの同名の文春文庫に詳しい。録音は宮内省庁舎であり、天皇は軍服姿で勅書を2回読み上げた▼「玉」は古代中国で皇帝を指し、幕末期には志士が天皇を指す隠語として使ったという。玉音は天皇の肉声という意味で使われた。前日には「重大発表あり」と予告が行われた▼ポツダム宣言を受諾して無条件降伏するか、戦争継続か。直前まで軍部と内閣がせめぎ合う。玉音盤は一部陸軍省幕僚と近衛師団参謀によるクーデター未遂事件に巻き込まれた▼日本が降伏しない場合に備え、米軍は大機動部隊を房総半島沖に前進させ、B29爆撃機250機がマリアナ基地を飛び立った。空襲に備えて焼け野が原の東京全域に空襲警報が出るなかで録音された天皇の声とともに、今の平和に耳を澄ませたい。

[京都新聞 2015年08月01日掲載]

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