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先生の宿題

 京都市内の美術館で男子中学生2人が熱心にメモを取っていた。「よう分からん絵やけど、題名長いから立派なんちゃう」「どれくらい感想書いたらええのかなあ」。会話を聞くと、美術館をリポートする夏休みの宿題らしい▼<宿題のやる気を壊すみんみん蟬(ぜみ)>月輪満。理由をつけて宿題を先送りし、土壇場で先生の顔を浮かべて焦った思い出しかない身には、何とも優秀な子どもたちに見える▼実は、先生たちも日ごろ、宿題に追われているようだ。文部科学省が先日公表した調査で、小中学校教員が最も負担に感じる業務は授業や生徒指導でなく、国や教育委員会からの「調査」への対応だった▼「3方向から『宿題』が重なることもある。子どもと向き合う時間が奪われる」とは京都府内の教員の話。3方向は文科省、府教委、市町村教委を指す▼みんみん蟬に囲まれ、昨年の国際調査では先進国で勤務時間が最長とされた日本の教員である。政権の方針で、新たに道徳や小学校英語の教科化、選挙権年齢の引き下げに伴う主権者教育への対応も迫られる▼残業に追われる先生に学んだ子たちが、社会に出て世界一の「残業戦士」になる。はて、こんな悪循環を断って誰もが働きやすい世の中にするにはどうすべきか-。政治家の「先生」の宿題としよう。

[京都新聞 2015年08月05日掲載]

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