凡語 京都新聞トップへ

救急の日

 人が一生の間に救急車に乗る確率はどれくらいあるのだろう。寡聞にして知らないが、筆者はこれまで3回もお世話になった。いずれも子ども時分のけがで搬送されたのだが、一度は生命の危機から救っていただき、救急、消防のみなさんには感謝の念に堪えない▼近年、救急現場がさまざまな問題に直面しているのが気になる。一つは出動の増加だ。2014年の全国の救急出動件数は約598万件、搬送人数は約539万人。件数、人数とも5年連続で過去最多を更新している▼救急車をタクシー代わりに使うなど悪質なケースもあるが、身近に頼る人がいない独居の高齢者が増えたことが背景にある。消防庁の推計では、今後人口は減少するのに、救急出動は増加の一途をたどる見込みという▼出動増加は到着時間の遅れや財政の負担増も招く。軽症の場合に救急車を有料化する議論もあるが、本当に必要な人を遠ざけ、助かる命を助けられなくなっては本末転倒だ▼入院中、両親から教えられたのは、筆者がけがをした時に、近所のおじさん、おばさんたちがどれほど心配し、世話をしてくれたかだった。大事なのは、お互いさまの心で高齢者を支えることではないだろうか▼きょうは「救急の日」である。高齢社会、人口減少社会を考える日にもしたい。

[京都新聞 2015年09月09日掲載]

バックナンバー


凡語 書き写し
 
著作権は京都新聞社に帰属します。
ネットワーク上の著作権について(日本新聞協会)