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政治と擬声語

 くよくよ、どんどん、すいすい、いずれも擬態語や擬声語(オノマトペ)と呼ばれる。ものの状態から受ける印象を言葉の響きに託したものだ。宮沢賢治が多用し、童話に独特のリズムを吹き込んだ▼耳にし、目にするだけで何となく意味が通じる。使える文字数が限られる俳句でも重要な役割を担う。長嶋茂雄さんの野球解説は楽しいが、時に意味不明になるのが欠点だった▼政治家も好んで使う。言語学者の報告では、国会の議事録を調べた結果、二十数年前に比べ、使用回数は3倍にも増えている。「しっかりと」は安倍晋三首相も好んで口にする▼「粛々と」の言葉も好きなようだ。古代中国の擬態語という。鳥が羽ばたく音をいい、本義は静かにという意味だ。政界では、世論の反対や対立する政党を押し切る場合に使う▼感情や気分に訴えるのは、政治の幼稚化といえなくもない。本来、政治とは論理的な言葉で道理を戦わせることではなかったか。政治に欠かせない論戦は避け、「理よりも情」で暮らしを左右する政治を論じられては困る▼世情を揺るがした安保法制の国会審議は議事録に「議場騒然、聴取不能」としか残せない混乱がヤマ場となった。でも、政治を軽蔑し、政治をあきらめるのはまだ早い。擬声語「うんざり」だけは口にすまい。

[京都新聞 2015年09月21日掲載]

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