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建物という資産

 通勤途中、マンションの新築現場につい目が行くようになった。横浜の傾斜マンション問題のせいもあるが、京都市内で「億ション」開発が相次いでいると知れば好奇心をそそられる。7億円超の物件も計画中と、本紙も報じた▼景気回復や海外からの投資流入が背景と聞く。庶民にはもとより無縁な話だが、いずれ定住者のないまま老朽化、放置される物件があちこちに-と心配にもなる▼コンクリートの建物は見た目は堅固ながら、実際の耐用年数は数十年。むしろ木造の方が長寿だともいわれる▼木造は傷んだ部材を交換していけば、社寺のように100年単位でもつ。コンクリートはそれが難しい。このまま部分的な取り換えや更新の仕組みを考えないのでは、どれも不良資産になる、と国際的な建築家・隈研吾さんは自著「建築家、走る」で指摘する▼世界遺産に登録された軍艦島では、廃虚と化した大正-昭和の高層建物群の劣化調査が以前から行われている。こうした研究から、新たな保全技術が生まれるかもしれない▼とはいえ、今ある全国のマンションやビルの一体どれだけが、数十年後も街の資産といえる状態を保っているだろう。規模が大きければ大きいほど、解体も建て替えも容易でない。歴史都市・京都にとって、より重い課題である。

[京都新聞 2015年10月20日掲載]

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